明日には『ゲーム&ウオッチパーフェクトカタログ』が発売されるということで、前回の『メガドライブパーフェクトカタログ』と並んで『パーフェクトカタログ』シリーズ展開の一歩を踏み出すことになります(というほど大げさなものではありませんが)。
そんなわけで、ちょうどいい機会なのでこのシリーズ名に込めた思いをちょっと語ってみたくなったので肩の力を抜いた駄文を少々書いてみました。駄文という割に長文となりましたがお付き合いいただければ幸いです。
メガドライブパーフェクトカタログ
『パーフェクトカタログ』というタイトルは、本書の制作進行中にいくつも挙げた候補から選ばれたものなのですが、ジーウォークの専務が「パーフェクト」とか「完全」といった文言が好きなかたでして、ほとんど反射的にあっさり決まったというものでした。おかげで、タイトル負けしないものを作らなければならずにプレッシャーが半端なかったです。もちろん、「違うタイトルだったら手を抜ける」というわけではないのですが、「パーフェクト」という言葉がついた時点でお客様はそれ相応のものを無意識に求めるわけで。
基本的に私が本を書くときには「自分だったら欲しいと思えるもの」を作るのですが、メガドライブの時に強く意識したのは「ハード周りの記事をとにかく充実させたい」というものでした。
今も昔も、新ハードが発売されるときはとにかくワクワクします。特に昔は情報チャンネルが雑誌程度しかなく、しかもローンチタイトル自体のブランドバリューもまだまだ低かったために「ハードの性能で期待をさせる」といった販売戦略が根強かったのです。思えば数年経つだけでハードが劇的進化する1980年代であれば、なおのことそういった思考になっても何ら不思議ではないわけですが。
メガドライブはとりわけその傾向が強く、いとうせいこう氏のCMでのセリフ「最近ゲームがつまらない。それはハードに限界があったからだ」が当時の思考をまさに象徴していたと言っても過言ではないでしょう。となると、メガドライブの魅力を語るということはハードの魅力を語るということであり、『メガドライブパーフェクトカタログ』において、ハード周りをきっちり紹介することは私の中では当然の帰結だったわけです。
まだろくにソフトの情報もない頃に「これだけのスペックのゲーム機があったらどんな事ができるんだろう?」と胸踊らせていた当時の高揚感、これを現在の出版物で再現しきってこそ『パーフェクトカタログ』なのではないか。ゲームソフトを紹介することは当たり前の話であって、「魅力を語る」という工程においては、むしろここからがスタート地点である、私は今でもそう考えています。
ゲーム&ウオッチパーフェクトカタログ
第1弾がメガドライブだったら次は「セガサターンか?」「PCエンジンか?」といろいろ言われましたが、ほとんどの方の予想を覆すかのように第2弾はゲーム&ウオッチとなりました。あえてゲーム&ウオッチを選んだ理由は別の機会に譲るとして、『パーフェクトカタログ』として出す以上、今回特に注力したのは「なぜゲーム&ウオッチは多様なシリーズが生まれたのか」という部分でした。
先も触れた通り、全タイトルを紹介することは当たり前のことであり、これ自体は別段、新鮮味があるものではありません。全タイトル紹介した上で、ゲーム&ウオッチの魅力を余すことなく伝えるにはどうすればいいか? そこで出した結論は「すべて実物大で掲載する」と「各シリーズの開発コンセプトを読み解く」でした。実物大による掲載については誌面を見れば一目瞭然なので説明を省きますが、実は後者のほうが『パーフェクトカタログ』の名を関する上で重要であると個人的に位置づけています。
ゲーム&ウオッチは最初期のシルバーから始まって、最後のクリスタルスクリーンまで10種類のシリーズが存在します。中には「これってゲーム&ウオッチなの?」と思われる異形のものまであり、なぜそうまでして多彩な製品をリリースしたのか、私自身、当初は疑問に感じるものも多数ありました。世間ではゲーム&ウオッチといえばシルバーから続くゴールド~ワイドスクリーン~ニューワイド、もしくは折りたたみのできるマルチスクリーンあたりを想像する人も多いでしょうし、素直にこれらのシリーズをコンスタントに発売するだけでもよかったはずです。
任天堂があえてそうしなかったのは、WiiやSwitchをはじめ現在の任天堂にも繋がる「新しい遊びを提案する」というゲームに対する「提案」の姿勢が根底にあり、これを伝えることこそ、ゲーム&ウオッチの魅力を伝えることに他ならないと考えたのです。では、任天堂がさまざまなゲーム&ウオッチを発売する過程で何を提案しようと考えたのか? これについてはぜひ本書を読んでいただきたいと思います。
使命は「ゲーム機の魅力を伝えること」
しつこいほどに繰り返しになりますが、今どきのレトロゲーム本において全ソフトを掲載することというのは「当たり前」です。ただし、これだけでは「当時のユーザーが思い出を掘り起こす」「コレクションする上でのカタログにする」くらいの用途にならず、当時を直接知らない人間に対して魅力を伝えることはできません。『パーフェクトカタログ』の根底にあるコンセプトは、すべてをひっくるめて対象となるゲーム機の魅力を伝えることにあるのです。
ゲーム機の魅力は機種によって異なりますし、メガドライブとゲーム&ウオッチにおいて、それぞれ違う手段でアプローチしました。引き続き本が売れてくれれば『パーフェクトカタログ』シリーズを今後も継続することはできると思いますが、いずれにしても掲載対象のゲーム機の魅力を伝えること、この根底がブレることなく作っていきたいと思っております。
ぜひ皆様の応援、よろしくお願いいたします。