2023年を振り返ってみた

今年は2020年から猛威を振るった新型コロナがようやく影を潜めるようになり、社会的には平穏に戻りつつあることが実感できる1年でした。しかし、出版の世界はこの3年間で大きく様変わりしており、紙の本の衰退、円安の影響による紙やインクなどの原材料の高騰といった逆風も多く、業界全体の展望としては決して明るいといえない状況です。

それでも、『パーフェクトカタログ』シリーズの増補新版など、いくつか新しい試みもありましたので、昨年に引き続き今年一年に発売された本を振り返りつつ、印象に残った話をしてみたいと思います。

PC-9801パーフェクトカタログ 下巻

昨年12月に発売された『PC-9801パーフェクトカタログ 上巻』に続いて今年の1月に発売されました。プレイステーションプレイステーション2など、過去の分冊では年代で上下巻に分けていましたが、本書ではPC-9801のゲームソフトウェア市場の特殊性を鑑みて上巻を「一般ゲーム編」、下巻を「美少女ゲーム編」としました。過去のMSXPC-8801などでは一緒くたに扱った美少女ゲームですが、それらのジャンルに抵抗を示す読者に配慮した結果なのですが、上巻、下巻ともに概ね同部数が売れてくれたみたいで、双方の市場のファンからも支持いただけたのではと思います。

世界一やさしいハングル読本

2000年前後に私が頻繁に韓国に行き来していた頃に、現地の友人から教わったハングルの読み方が大変わかりやすかったので、これを1冊の本にまとめておきたいといった考えから書いた本です。覚えやすさに主眼を置いたために正確さという意味ではややオミットした内容(ネイティブな韓国人でも「e」と「ae」は区別できない人が多いみたいです)となっていますが、最低限にやさしく覚えるには適切なボリュームの本と自負しています。

20世紀アーケード格ゲーカタログ

これは珍しくジーウォークの担当さんから提案あった企画。20世紀を彩った格ゲー174タイトルを集めて総括した本です。従来の私の本では特定の機種縛りというテーマが多いのですが、対戦格闘ゲームの起こりからその進化までまとめることができ、違う視点で楽しみながら書くことができました。

電子ゲーム機スーパーガイド

日本のゲーム市場がビデオゲーム中心になる前の、1985以前に市場を席巻した電子ゲーム機を集めた本です。レトロコンシューマ愛好会を主宰しているプラウドロー氏のコレクションを中心に構成しており、氏の協力なくしては成立しませんでした。数日がかりでコレクションルームにこもりきり、ひたすら写真撮影をしていたのが印象に残っています。さらにコレクションが拡充された暁には改訂版をぜひやりたいですね。

自宅をゲーセンにした男たち

コンセプトとしては極めて明確、でも意外なことにありそうで今まで存在していなかった1冊です。当たり前の話ですが、掲載に協力してくださる方がいないことには成立しない企画だけに、快く取材を受けてくださった皆様には改めて深いお礼を申し上げます。この年のゴールデンウィークはただ撮影取材に費やしており、昼間に取材訪問、夜に高速を使って全国を移動(GW中は昼間は混雑するため)という強行軍でした。苦労はあったものの、取材先さえ集まればまたやりたい企画ですね。
もし我こそはという方がいらっしゃいましたらぜひここまで応募お願いします!

【増補新版】ファミリーコンピュータパーフェクトカタログ

「2023年7月15日のファミリーコンピュータ発売40周年に合わせて何か出版物が欲しい」という出版社のリクエストに応えて作った本ですが、「在庫欠品していながら印刷コストの都合で増刷できなかった『パーフェクトカタログ』シリーズに付加要素を付けて再発売する」という目的もありました。かなり分厚い本となりましたが、その分メモリアル感は出たと思います。

懐かしのテレビ野球ゲーム大全

『20世紀アーケード格ゲーカタログ』のようにゲームジャンル特化型の特集本です。個人的には実名の選手が登場する90年代なかば以降の野球ゲームよりも、「くろまて」みたいなパチモノ臭漂う旧世代の野球ゲームに妙に惹かれるんですね。せっかくなので、これらのゲームの選手データも全部突っ込んじゃいました。「このデータが欲しかったんだ」みたいな酔狂な方はいないと思いますが、当時の空気の一部として楽しんでもらえれば幸いです。

四半世紀を振り返るエロゲー大全

『PC-9801パーフェクトカタログ 上巻』で美少女ゲームについて解説を書いている時に、当時の年表や事件、他のメディア(アニメや漫画など)との相関について語った本って今まで存在していなかったなと気が付き、筆を執った1冊です。美少女ゲームがどのように発生して、どのような進化を遂げてきたのか。これまでにどんな事件や問題にぶつかってきたかといった、大枠の流れを掴むことができる本を目指しました。

ニンテンドーDSパーフェクトカタログ

21世紀のゲーム機ですが、「同世代のハードとしてはすでにPSPとかやってるからいいよね」というわけで『パーフェクトカタログ』シリーズに登場です。ニンテンドーDSで1冊にまとまった本はなかなかないためか、発売後即重版が決まった本でした。本を書いた人間が言うのも変な話ですが、制作中に「ニンテンドーDSっていいハードだなぁ」と心底感じながら作業に当たっていました。そんな気持ちと魅力が伝わってくださると幸いですね。

【増補新版】メガドライブパーフェクトカタログ

基本コンセプトは『【増補新版】ファミリーコンピュータパーフェクトカタログ』と同じで、35周年というメモリアルイヤーに5年前に作った本(これがパーフェクトカタログの第1号でした)を再販したかったというが直接の理由です。ページ数もさることながら、どうしても高額な本となってしまったこともあり、せめてものおまけとして「メガドライブ本体の実物大ポスター」を付けました。もう実機を知らない世代も多いと思いますので、少しでも雰囲気を感じ取ってもらえればと思います。


そんなわけで、今年もおかげさまでいろいろな本を発売することができました。来年もより一層頑張って面白い本をお届けしますので、より一層お引き立ていただけますようよろしくお願いいたします。

ご購入はこちらから

 

ABOUTこの記事をかいた人

1972年愛媛県松山市生まれ。アーケード、家庭用、PCはもとより美少女ゲームまで何でも遊ぶ、ストライクゾーンの広い古参ゲーマー。ただし、下手の横好きがたたり、実力でクリアできたゲームの数は決して多くないのが弱点。