とんがりギャルゲー紀行 第135回:白衣性恋愛症候群Re:Therapy

 さて、本日もとんがったゲームを紹介していきますよ。
 今回ご紹介するのは、新人看護師を主人公とする社会人百合ものの恋愛アドベンチャー。

白衣性恋愛症候群 Re:Therapy

 工画堂スタジオのしまりすさんチームによるゲームです。元々は『白衣性恋愛症候群』として発売されていたタイトルに、攻略可能ヒロインや新規エピソードを追加したものとなります。パワーアップ版というか完全版というか、そんな感じです。現在はさらにグラフィックをリファインしたリマスター版が出ているので、いま買うならそっちですかね。
 ちなみにタイトルは「白衣性高血圧」と「白衣症候群」という、過剰にドキドキしちゃう病気の名称を元に、ゲームをプレイする人にドキドキしてもらいたいという願いを込めて付けられたのだそう。実際、いちゃいちゃな百合物語にドキドキしたり、時にはヒロインが死んだり主人公も監禁されちゃったりしてドキドキするので、タイトルどおりですね。

 ※パーフェクトカタログの宣伝を兼ねてPSP版を紹介しようかとも思ったのですが、解像度がいいので今回はWindows版の画像を採用しました。

 本作はお話の設定の都合上、ちょっぴりファンタジーもしていますけど、現役看護師がシナリオを手掛けているのでお仕事の描写はわりとリアル。患者さんの世話をするシーンもきちんと描かれています。おむつの装着を前後間違えて患者さんに恥をかかせた(家族の前で便の漏れが発覚してしまった)罰として、主人公と指導役の先輩がおむつを着用&排泄して感想レポートを書かされるシーンなどもあって、かなり真面目にお仕事してます。
 以前、このゲームに関して人に聞かれた際に、「看護師の主人公が先輩看護師と一緒におむつを履いてレポートを書くシーンのあるゲームだよ」と大変偏った返答をした覚えがありますが、真剣に患者さんと向き合う姿勢が個人的に印象に残っただけで、変態的なゲームではまったくないです。

 とまあ、百合ものの恋愛ゲームでありつつ、厳しくも真面目に看護と向き合う姿も描かれていたのが印象的で、これ結構すごいゲームだな、とプレイ当時に思ったのを覚えています。
 ゲーム自体は、選択肢で展開が分岐する、よくあるタイプのアドベンチャーゲームなのですが、作中に登場する医療用語の解説機能があったりとなかなかに本格的。そのうえ、百合ものの中では供給少なめな社会人百合を扱っているので、本作はかなりとがった存在なんじゃないでしょうか。

 このゲームの主人公は新人看護師の沢井かおり。幼少期に交通事故で瀕死の重傷を負った経験から看護師を志した女性で、とある事情から他者を癒す不思議な異能“癒しの手”を持っています。といっても、本人ですら当初はプラセボ効果かなーと思っていますし、異能力者がほいほい畑で採れる世界観でもないので、大っぴらにはしていません。信じようが信じまいが、わたしはヒーラー。なんてリアルで言い出したら変な人扱いされちゃいますからね。

 本作はそんな彼女が一人前を目指して頑張るお話というわけ。ちなみにかおりちゃんは素直で一生懸命でとっても可愛いので、たいそうおモテになります。可愛い系といっても恋愛ではわりと攻めに回りますが。
 個人的に好きなのは、高校時代からの付き合いである藤沢なぎさ先輩のルートですね。
 一般的に、恋愛ゲームの選択肢って、狙った攻略対象が喜ぶ選択肢を選んでいればその相手のルートに入れるものですよね。でも、なぎさ先輩に限っては違うんです。
 なぎさ先輩は面倒見がよく快活な人柄で、主人公のかおりちゃんのことも大層かわいがってくれます。実を言うと以前から主人公を想っていて、その恋心は本人以外にはバレバレなのですが、冗談めかしてじゃれついたり酒の勢いで甘えてみたりはしても、決定的なことは言えません。一途なヘタレなんです。

 そんななぎさ先輩と恋愛するには、他の人よりはなぎさ先輩を選びつつ、2人の時はそっけなくする選択肢を選んで、いい感じに揺さぶる必要があるんですね。
 わかりやすく好感度が上がりそうな選択肢を選ぶのではなく、揺さぶりをかけて落としにかかるゲームって他では見たことがないかもしれません。高度な駆け引きです。小悪魔ムーブです。すごいよ、かおりさん。
 好きな人の近くで、しかも仲良しとなると、「このままでもいいかな」と安心してしまうのか、関係の変化に怯えるのか。
 なんにせよ、なぎさ先輩は学生時代からヘタレ続けている人なので、不安にさせないと踏み込んで来ないのだと思われます。彼女との恋は追い込み漁。追い込んで追い込んで望みどおりに動かすことが大切なんですね。
 珍しい仕様なので、初めてプレイした時は攻略に難儀し、その後おもしろいなあと感心しました。なるほど、恋愛ってそうシンプルじゃないよね。とかなんとか。

 ちなみに、ルートに入った後は流石に優しくしてあげなくてはなりません。
 「先輩の恋愛弱者♡ ヘタレ♡ ざぁこ♡ ざぁこ♡」とばかりに甘やかさずにいると、さらに不安定になった先輩に取っ捕まって廃用性症候群にされて監禁バッドエンドになります。
 薬品で喉を焼かれたけど、ストックホルム症候群の効果でラブラブよ。

 まったく、緑髪の看護師はときどき洒落にならないほど病むから油断できないわ。

『君が望む永遠』のヤバイナースさん

 ところで、本作のタイトルコールは直前に迎えたエンディングによってボイスが変化する仕様なのですが、グッドやバッドの各種エンディングそれぞれにパターンが用意されているんですよね。
 監禁バッドエンドを迎えた時は、なぎさ先輩(CV日笠陽子)がめちゃめちゃ陰気に「白衣性恋愛症候群、リセラピー……。ふ、ふふっ。ンっふふ……」と言うボイスになります。
 これがなんというか、たまらなく好きなんですね。タイトルコールはこれにしておきたくて、筆者はたびたび監禁されていました。ぜひ聴いてみて欲しい鬱々ボイスです。おすすめ。

 と、一部ダークな展開もありますが、基本は楽しい雰囲気のゲームです。公称ジャンルの「キラ☆ふわガールズラブ看護師アドベンチャーゲーム」は決してウソではありません。普通にラブラブでいちゃいちゃなハッピーエンドとそのアフターストーリーもたっぷり楽しめるので、とってもおすすめ。
 コミカルもシリアスも抑えたテンポのいいシナリオで、キャラの個性も立っている良作なので、興味があればプレイしてみてくださいね。

 さて、それではこの辺で。また次回もよろしくお願いします。

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