ゲーセン店員の懐古主義で行こう 第1回:龍虎の拳

はじめましての方ははじめまして、そうでない方は……いないのでやっぱりはじめまして、元ゲーセン店員の稲波と申します。
古いアーケードゲームの思い出なんかを語ってみようというこのコーナー。お客としてゲーセンに行っていた頃から店員として働いていた頃まで語っていこうと思います。徒然なるままにとか書いたら駄目なんでしたっけ?

それはさておき、そうは言っても意外と古いものもあまり知らないなーという問題が。対戦格闘ゲームが流行った頃に誘われてアーケードゲームにハマったぐらいの人間なので、意外と詳しくもない。それを考えると、対戦格闘ゲームが流行ったきっかけであるストリートファイターⅡを語るべきなんだろうけど、投げが入力できなかった私は投げボタンが有るということで餓狼伝説に移行。そんな私のストⅡの思い出は、友人がサークルの先輩をゲームに誘った際のはじめの一言が、

「インド人はおるんか?」

であったことでしょうかね。その先輩は鬼のように強いダルシム使いに……。意味のわからない方でしたよ、本当に。
そんなストⅡを尻目にSNKゲームに嵌った私。餓狼伝説は順調に上達し、ワンコインクリアが当たり前になり、ストⅡもまあそれなりにプレイし、コマンドもなんの問題もなく入力可能になった頃に登場した「100メガショック」第1弾ソフト、「龍虎の拳」。

 

このゲーム、意外とメディアミックス展開しておりテレビアニメまで制作されました。まあ、SNKのアニメってロクなイメージないんですけどね…… リョウ・サカザキ役に別所哲也、ユリ・サカザキ役に浜崎あゆみ(当時は浜崎くるみ)が声を当てており、まあ話題になったのかなぁ? 別所さんはもともと役者なわけで慣れないながらも演技してらっしゃるんですが、浜崎さんは…… そうそう、アニメ以外にもゲーメスト誌上にて漫画も連載しておりました。描かれていたのは『むこうぶち 高レート裏麻雀列伝』の天獅子悦也先生。「ご無礼」のセリフが有名な作品ですね。そんないろんな方が関係した龍虎の拳ですが、肝心のゲームはと言うと、はじめにびっくりするのは画面のズームイン・ズームアウト機能。キャラが近寄るとカメラが寄り、離れるとカメラが引くわけです。まずは、その画面になれないといけません。そして次に問題になるのが、

技が出ねぇ!

この一言につきます。大問題です。なんと波動拳コマンドですら成立しない有様。昇竜拳コマンドなんて夢のまた夢であります。更には気力ゲージなるものがあり、これが十分に無ければ絞りカスのようなものが出るだけという仕様。無くなったら溜めなきゃいけないし、挑発されると無くなっちゃうしで無くなる前にぶっ放せと思うのですが、肝心の技が出ねぇ…… しかも、一人目から本気で殺しに来る。どうしろというのか。ひとまず技を出すために色々と試してみると、レバーでコマンドを入れて、レバーを放してボタンを押すぐらいのタイミングでやっと技が成立。パターンを学習して先出しで技を入力しておくべしという現実に気づき愕然としました。まあ、もっと愕然としたのは、やっと成立した虎煌拳がワンパンで消されたことですが。飛び道具が通常攻撃で消せるんですよね、このゲーム。ボスのMr,カラテに敗北すると「覇王翔吼拳を会得せん限りお前がわしを倒す事など出来ぬわ!」と言われるんですが、当然覇王翔吼拳もワンパンで消えるわけですよ。これ覚えるくらいなら体力ゲージ増やしてスコアアタックするわい、と覚えなかったのもいい思い出。


覇王翔吼拳、本当にいらない。

その他にも超必殺技伝授などのキャラ性能に関わるミニゲームなどの今までの対戦格闘ゲームになかったシステムが組み込まれた意欲作と言えましょう。龍虎以外のゲームには引き継がれませんでしたが。そうそう、龍虎乱舞という隠し超必殺技が登場し、これ以降の格闘ゲームに標準装備になった一発逆転できる超必殺技の初登場作品でもあります。ああ、そういえば必殺技でトドメをさせば衣服が弾けるというのもありました。


必死でキングを脱がせたなぁ……
ちなみに画像は龍虎乱舞の最後の一発

さて、このタイトルの家庭用の移植をモノリスが行ったわけですが、これがまた出来が良いわけです。(発売はケイ・アミューズメントリース)もちろんスーパーファミコンなのに、ではありますが。アーケード版ほど激しくはないですが拡大縮小も行っており、十分に満足できるものでした。更には、全キャラクターに超必殺技が追加され、ストーリーの補完も行われました。アーケードでは語られなかった事件の裏側が語られるわけですが、全部ギースのせいというわかりやすいストーリー。ギースがタクマにジェフ・ボガード(テリーとアンディの義父)を殺させようとしたとか、この時点でこの話を追加したモノリスは素晴らしいと思いますよ。ただ、このSFC版、一つ問題があるとすればタクマにバグが有ることでしょうか。この時のタクマは一瞬で気力が回復する仕様でした、ボスなので。それがプレイヤーキャラになった本作でも生きており、一定時間ボタンを押すとギュンと回復してしまうわけです。しかも、いつボタンを押しても、です。そのおかげで、覇王翔吼拳中にボタン長押し、一瞬で回復、龍虎乱舞、などやりたい放題に……まあ、これ以外に特に問題はないと思います。今更ですが、ぜひプレイしてこの理不尽を体験してください。ぶっちゃけ爽快です。

ちなみに、勘違いしやすいことなんですが、「無敵の龍」がリョウ・サカザキ、「最強の虎」がロバート・ガルシアです。「虎煌拳」は「虎をうやまう拳」、「龍撃拳」は「龍を撃つ拳」という意味らしいです。なので、「虎煌拳」を使うのは「龍」であり、「龍撃拳」を使うのは「虎」であるわけです。ふつーに逆だと思うわな。
実際、『餓狼伝説SPECIAL』の隠しキャラであったリョウ・サカザキの「虎煌拳」に虎が描かれていたりと、SNKスタッフですら混乱していたようです。だったら、プレイヤーが間違ったって誰が責められようかってなもんです。

そんな様々な新システムを搭載した意欲作の二作目が発表されます。タイトルはなんのひねりもなく「龍虎の拳2」

 

アニメの「バトルスピリッツ 龍虎の拳」は本作のプロモーションのために制作された経緯があります。で、肝心の2ですが、前作とは違いプレイヤーキャラが一気に増えました。前作においてCPU戦はリョウかロバートの二択であったため、選択肢の広がりが半端ない。CPU戦でも前作の敵キャラが使用可能になり、新キャラも追加されました。そう前作において一人目にも関わらず殺意の高かった藤堂さんも今回はプレイヤーが操ることができるわけですよ。というわけで、藤堂さんを……


藤堂さんを……ん? いなーい! リストラされとる!

ま、まあそんなこともあるか。それなら、前作では囚われの身であった、おしとやかそうなユリ・サカザキを……


誰、これ?

と言った具合に色々と裏切られつつプレイした覚えがあります。
また、負け無しで進めば餓狼伝説のボス、ギースの若かりし頃が隠しボスとして出てくるなど、プレイヤーへのサービス要素もありました。


このギースのデザインはアニメ「バトルファイターズ 餓狼伝説」のギースが元になっています。

そして、倒すことができると、


餓狼伝説につながるバックストーリーが。

そしてシステム面ですが、受け身が追加され投げのダメージを減らすことができるという仕様に。CPUが受け身取りまくって倒せないのなんのって…… まあ受け身がないと、投げ→受け身を取らなければ起き上がりに飛び道具を重ねる→ピヨる→投げから繰り返し、で勝てちゃうからいるのかなぁとも思いますが。あれ? 書けば書くほど駄目ゲーに感じる……ま、まあ、まだ黎明期で試行錯誤を繰り返していた時代、そんな中バランスも悪くなく楽しめたという意味ではやはり良ゲーだったと思います。バーチャファイターキッズとかブチ切れたからね、ホント。

それではこのへんで。ではまた~

当記事に関連する商品紹介