とんがりギャルゲー紀行 第33回:銀河お嬢様伝説ユナ

さて、本日もとがったゲームを紹介していきますよ。

今回紹介するのは『銀河お嬢様伝説ユナ』

シリーズ一作目である本作は、ギャルゲーにおけるメディアミックス展開の走りになった作品でもあります。キャッチコピーは『絶対人気!デジタルコミックの新ヒロイン”ユナ”』

▲タイトル画面ではピンクサファイアの名曲「P.S.I love you」が流れます(PSP版では楽曲未収録)

1992年、PCエンジン向けにリリースされたギャルゲーです。

レッドカンパニー×ハドソンというタッグによって生み出された、オリジナルでは初のデジタルコミックになります。ゲーム内容はコマンド選択式のアドベンチャーですが、コミックを名乗っているだけあってグラフィックが非常に豊富です。PCエンジンの性能限界なのか文字送りが非常に遅いのが辛いところではありますが(スキップもできない)、ほぼフルボイスというのも素晴らしい。

明貴美加の描く可愛らしいキャラクター、ユナ役を演じた横山智佐の人気もあって本作は当時大きく評価され、続編やアニメ、画集、公式BBS、パソコンデータ集など、関連作品やサービスも多く登場しました。後にギャルゲーとアニメをリンクさせたメディアミックス作品がばんばんリリースされたのは、本作の成功が大きいのではないでしょうか。

話が飛びますが、ディスクをCDプレーヤーで再生すると昔なつかしの注意音声が聞けます。

「こんにちはー! ユナでーす! これはねー、HE-SYSTEMのCD-ROMディスクっていって、要するにアタシと遊ぶことができるCDなのよ。でもね、このまんま聞いてると、2曲目からピーッガーッっていうコンピューターのプログラムの音がかかっちゃうから、再生しないでね。約束だよ?」

ちょっとブリッ子な演技の横山智佐ボイスがいい……。

セガサターンや初代プレステ、PCエンジン、ドリームキャストのゲームは、こういった音声やサウンドトラックなどがゲームディスクに収録されていることがありました。実質ソフトのおまけみたいなものでしたね。(※スピーカーが壊れる可能性があるので、試したい方はCDプレーヤーではなくパソコンを使うといいかも。どちらにせよ自己責任でお願いします)

ドリームキャスト本体にゲームディスクを入れたのに、CD再生機能が起動していたせいでキャラクターに叱られてびっくり……なんて体験をしたのは、筆者だけではないはず。でも、最新のゲームではこういったことはもう起こらないんですよね。そう思うとなんだかノスタルジックな気分になります。

話を戻しますね。

あらすじはだいたい以下のとおりです。

主人公の神楽坂ユナはごく普通の女の子でしたが、銀河お嬢様コンテストで優勝したことをきっかけに超人気アイドルに。それからは学校もろくに通えないほど大忙しの日々を送っています。しかし、そんな栄光の影で、コンテストに出場していた女の子たちが行方不明になる事件が発生していました。

そんな折、光のマトリクスなる妖精(?)英知のエルナーがユナの前に現れます。エルナーによるとユナは「光の救世主」であり、宇宙の平和を守るためにユナの力が必要だと言うのですが……。

戸惑うユナの前に、行方不明になっていた少女の一人が現れます。闇の力に囚われ、暗黒お嬢様となって強大な力でユナに襲い掛かってきたのです。

脅威を退けたものの、宇宙の危機は未だ去ってはいません。事態を理解したユナは闇の力に打ち勝つため、宇宙へと旅立つことになるのでした。

なんだかシリアスっぽいあらすじになってしまいましたが、作品のノリはコメディです。上画像のようにプロローグでユナ宅のご近所が破壊されてしまいますが、彼女の反応は「それよりご近所こんなにしちゃって、ちゃんと片づけなさいよー!?」というものだったり。

おっちょこちょいで泣き虫なユナが、妖精たちにあやされたり諭されたり、時に呆れられたりしながら光の救世主としての力を獲得していくという、王道変身ヒロインモノといった感じですね。

聞いた話では、企画段階ではシリアスなストーリーになる予定だったのが、ハドソンからの提案でコメディへと切り替えられたとか。結果としてこのノリがウケたわけですから、路線変更は英断だったのかもしれません。

ほんの序盤でちょっとだけ登場するユナの両親のグラフィックを一枚。広井王子がユナのパパ役を演じているのですが、恐ろしいほどの棒読みです。

グラフィック数がとにかく多く、その豊富さに驚かされます。上の画像は暗黒お嬢様十三人衆の一人である楓の登場シーン。暗がりから現れる不穏な感じが出ていますね。このシーンは筆者のお気に入りですが、ここに限らず全編にわたって大量のグラフィックが使われています。

余談ですが、暗黒お嬢様十三人衆って響きがすごく好きです。大半の暗黒お嬢様が登場後すぐにユナに負けて退場するので誰が誰だかさっぱり覚えていませんが、暗黒お嬢様十三人衆って字面を見るだけでクスっときます。

暗黒お嬢様たちは美少女コンテストでユナにグランプリの座を奪われたことで心に闇が生まれ、闇の力に囚われたらしいのですが、

「なによ! あんなちんちくりんより私のほうが絶対可愛いのに!」→闇堕ち

という流れなのかな、と想像するとなんだかシュールで面白い。ユナは作中でしょっちゅう「ちんちくりん」呼ばわりされていますが、スリーサイズは当時の横山智佐のものと同じだそうです。それを知ったうえで暗黒お嬢様たちにスタイルについてバカにされるユナを見ていると、なんだかこっちがひやひやしてきちゃいます。

バトル画面はこんな感じ。防御していても戦いは終わりませんので、基本は攻撃一辺倒でいいと思います。「しおらしくする」でよよよ……な態度を取っても、容赦なくボコボコにされますし。

攻撃にはビームやソードを使った「武器攻撃」のほか、「いぢわる攻撃」なるものがあります。説明書には「いくらお嬢様と言っても、そこは女の闘い、言葉を使って攻撃だ! 効果は大きいが、使用回数に制限がある。「お嬢様ポイント」を有効に使って敵の弱みにつけこもう!!」と書かれています。人の弱みにつけこんで嫌味を言うたび、お嬢様として大切な何か(お嬢様ポイント)が減っていく……という、面白いシステムですね。まあでも体力やお嬢様ポイントは戦闘終了時に全快になりますので、気にせずどんどん使っていいと思います。武器攻撃はけっこう回避されますが、「いぢわる攻撃」は必中ですし。

闇に囚われているわりに、暗黒お嬢様たちのリアクションはやたら素直です。「いぢわる攻撃」のバリエーションを見るのも作品の楽しみ方のひとつかもしれません。友好的だった敵との戦いでは「いぢわる攻撃」のコマンドが出現しないのも芸が細かい。

戦闘のバランスはいいとは言えませんが、負けてもすぐに再戦できるので何度でも挑みましょう。

バトルに勝利すると、ちょっぴりセクシーなグラフィックを見ることができます。

昭和のギャグマンガみたいな話のノリについていけるかは人次第ですが、明貴美加の絵が好きなら遊んで損はないと思います。シリーズの2作品と『銀河婦警伝説サファイア』を収録した『PC Engine Best Collection 銀河お嬢様伝説コレクション』がPSP向けに出ていますので、これから遊ぶならそちらがおすすめです。追加要素はありませんが、たっぷり遊べてお得ですので。

おまけ。GIFを作ったはいいけど置き場がなかったユナの変身シーンの画像です。

いつもメジャーなタイトルは取り上げない本コーナーですが、紹介記事をあまり見かけなかったので書いちゃいました。それでは今回はこの辺で。次回もよろしくお願いします。

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