とんがりギャルゲー紀行 第29回:ポケットラブ

KIDが1997年にリリースした『ポケットラブ』は、ゲームボーイ初のギャルゲーとして知られる作品です。

主人公の育成と恋愛を絡めた内容は、初代ときメモのヒットによって数多く生み出された「ときメモフォロワー」といえるものですが、先ほども書いたとおりゲームボーイ初のギャルゲーであること(ゲームボーイ版『ときめきメモリアル』より発売が早かった)、それとCDプレイヤーとリンクさせることでボイス付きでゲームが楽しめるという特徴を持っています。

CDプレイヤーとリンクっていうのをわかりやすく説明すると、ソフト同梱のCDをゲームをプレイしながら再生することでボイス付きっぽくするってことですね。

ゲームハードの限界をゲームの外側で補う。力技ですが、面白い発想です。

ぶっちゃけこのCDさえあればゲームをクリアしなくても告白シーンのボイスまで聞けちゃうんですが、やっぱり育成を頑張って達成感を感じないともったいないと思いますよ。

というか、CDには告白失敗してフラれる時のボイスも入っていますからね……。再生するトラックを間違えると何もしていないうちにフラれる気持ちを味わうことになりますよ……。ゲームのキャラが相手とはいえ「嫌いじゃないけどこのままの関係がいいな」ってキープ扱いされるとね、ちょっとね、凹むので注意です……。

ちなみに出演声優はかなり豪華です。

  • 國府田マリ子
  • 岩男潤子
  • 宮村優子
  • 井上喜久子
  • 氷上恭子
  • 横山智佐

なので、これからプレイするという人にはCD同梱版がおすすめです。CDがなくてもプレイできるので、声は別になくてもいいやという方は安価なCDなし版でもいいかも。

 

本編のストーリーは、高校2年になった主人公がクリスマスまでに恋人を作るために奮闘するというものです。

プレイ期間は高校2年の4月初め~12月25日まで。3年間を過ごす『ときメモ』に比べて短くはありますが、個人的には特に短いとは感じず、ちょうどいいくらいかなーと思いました。結構むずかしくてコツをつかむまではフラレまくってしまったので、あんまり長いと心が折れていたことでしょう。

育成画面はこんな感じ。

勉強、身だしなみ、クラブ(部活動)、カラオケ、ゲーム、アルバイト、リラックス(休養)といったコマンドがあり、平日は一週間分をまとめて入力&実行して己を鍛えていきます。(休日は午前・午後に分けて個別実行)

コマンドによってステータスが増える一方ではなく減るものもあるので、満遍なく上げようと上手く育成できません。ステータスは0以下にはならないので、ゲーム開始してしばらくは学力0でも気にせず体力が上がるコマンドだけを実行し(部活も体育会系に入る)、体力が250くらいまで上がったら学力を育てる(部活も文科系に乗り換える)という集中強化方針を取るとうまくいきますよ。ヒロインとのエンディングはたぶん健康以外が200~230くらいに育っていれば見られます。ヒロインごとに注目しているステータスがあると思われますが、前述のやり方ならどのヒロインでも攻略できるステータスになるので気にしなくてもいいはず。

ちなみに筆者は漫然とプレイして5回くらい幼馴染の佐伯るるなにフラれました。デートでどんなにいい雰囲気になっていてもステータスが足りないとダメなので、プレイするなら育成のコツをつかむ必要があります。あ、それと誕生日と血液型によって主人公の性格が荒っぽくなることがあり(わざわざ選択肢などのテキストも変化する)、ヒロインによってはうまくいかないこともあるので注意。会話の選択肢を見てオラオラ系っぽかったら設定しなおして再プレイするのがいいでしょう。

攻略失敗時の一幕。オラオラ系主人公のまま進行していたら文化祭の演劇で主役になれませんでした。演目が『ロミオとジュリエット』だったので、「死ななくて済むしヒロインと一緒に主役を張れなくてもまあいいか」と思っていたら大失敗です。結局、相手役になるはずだったるるなにフラれました。

見た目のステータスはかなり育てていたので、育成不足ではないはず。もし主人公が「ああジュリエットさまジュリエットさま、どうしてわたしはロミオじゃないの?」と聞いていたら、たぶん「人格がアレだから」という答えが返ってきたのではないでしょうか。

これで「やだ、男らしい……」ってときめいてくれるならよかったんですが、無理でした。

確認した限りでは、主人公の性格は「俺様」「気弱」「温厚」の3パターンありました。性格によって女の子ごとに好感度の上がり方が違っていましたが、細かいところは不明です。元気で丁寧な口調の「温厚」の時は安定して攻略できました。

『ときめきメモリアル』では主人公のステータスと平日の実行コマンドによって女の子が出現しますが、『ポケットラブ』では女の子は全員必ず出現します。その代わり、登場した女の子を放って置いても悪い噂を流されて好感度が下がるなんてことは起きません。おかげで爆弾処理に奔走して狙っていない女の子に告白される……という悲劇に見舞われずに済みますよ。

電話番号は女の子と会えば自動獲得し、好感度も好きな時に自分でチェックできるなど、簡略化されたシステムが遊びやすくて好印象。

ちなみにヒロインは以下の7人。

パッケージよりドット絵で描かれたヒロインの方が可愛い気がします。声優がやたら豪華でヒロインが可愛いのはKIDゲーの特徴ですね。

可愛いけどちょっと理不尽な態度が妙にリアル。好感度が低い初期はヒロインの反応がかなり冷たいです。

上の画像は電話でヒロインを呼び出してデートしている時のものですが、気が乗らない感じがありありと出ています。まるで、愛想笑いを真に受けてデートに誘ったら「社交辞令って知ってる?」って言われたかのような気持ちが味わえます。なんというか、生々しいですね……。

登校時、始業前、昼休み、放課後などにランダムで女の子とのイベントが発生します。ヒロイン独自のイベントはほとんどないのですが、同系統のゲームに比べて遭遇頻度はかなり高い印象。ゲーム後半になると一日に複数回発生するのも珍しくなくなります。他のゲームだとこういったランダムイベントは確率が低くて全部見るのが大変だったりしますが、『ポケットラブ』ではそういう苦労を感じない印象です。

ちなみに上の画像は女の子と目が合うという全ヒロイン共通のイベントです。好感度が低いと目を逸らされたり、無視されたりしますが、好感度が高いといい雰囲気で見つめ合うという風に反応が変化していきます。

外で偶然会えたことに喜んで声をかけ、痴漢と間違えられてしまうことも……。まあ、夜に人気のないところで親しくもない異性に声をかけられたら、怖いよね。

こちらも低好感度時の遭遇イベント。でも、可愛いギャルに気安いノリでいじられるのって、なんかいいですよね。これで井上喜久子ボイスですよ……。たまりませんよね……。

こちらもランダムイベント。先ほど「悪い噂を流されて好感度が下がるなんてことは起きません」と書きましたが、噂自体が流れないわけではないです。誰が主人公を狙っているだとか、特定のヒロインが主人公をどう思っているかという会話を聞いてしまうシーンが用意されています。やや人を選ぶ設定かもしれませんが、ヒロインにはそれぞれ主人公以外に気になる異性がいて、どちらが好きなのかを友人に聞かれているシーンもあったり。

ゲームボーイのソフトのわりにやたらイベントが濃い……。噂しているシーンがあるだけで他の男に取られるわけではないのですが、そういう会話を見ていだけでボディブローのようなダメージがじわじわきます。好感度さえ上げちゃえば他の男は眼中になしって態度になるので、プレゼントやデートでさっさと本命の心を奪ってしまいましょう。

辛辣な態度は最初だけで、結構簡単にデレます。

電話でデートに誘うと電話だけで休日を半日消費、デートでまた半日消費してしまうので、基本的には呼び出しデートがおすすめ。

「お出かけ」コマンドで任意の場所へお出かけし、女の子を電話で呼び出してデートすることで、半日で電話とデートの両方を実行できるのです。午前中に呼び出して午後も一緒に行動すると、ゲーム的にはデートを2回したことになるのでとってもお得。

縁日と花火大会は事前に電話で約束しないと行けませんが、普段はこれが一番効率がいいです。

ちなみに普通に電話で誘うとこんな感じ。「そうねぇ……」のテキストがゆっくり表示されて焦らされるのが雰囲気出てていいですね。ゲーム開始直後はやたらお断りされますが、PHSやポケットベルなどの連絡アイテムを買って使用するとお誘いや呼び出しの成功率が上がります。

ポケベルとかピッチって、年代によってはもう通じないんじゃないかな……。

好感度を上げていくと、女の子と仲良く下校しているところに他の娘と出くわして気まずくなるイベントも発生します。ホントになんでこんなにリアルなんだろ……。女の子の生々しさがよく描かれていますね。でも、胃が痛くなるけどこういうの何故か好き……。胃が痛くなるけど……。

修羅場な遭遇イベントが発生した直後であっても、主人公と一緒に下校した側の女の子はけろっとした笑顔のままです。単にソフトの容量の都合で別れ際の会話のパターンが少ないだけなんでしょうが、去っていった女の子を気にしている描写がないのが勝者の余裕に見えて、なんだか「女の子だなあ」とうなずいてしまいそうになったり。

あ、口直しに平和な画像を置いときますね。

ちなみにこの『ポケットラブ』はシリーズ化しています。本作でくっついたヒロインにフラれてしまうという衝撃的な展開から始まる続編『ポケットラブ2』(こちらもCD同梱版ありのゲームボーイソフト)、IF展開を描いた前日譚『ポケットラブ~if~』があるのですが、すべてにおいて主人公の変更なしというギャルゲーとしては珍しい設定になっています(ヒロインも一部共通)。

『ポケットラブ~if~』はシリーズ唯一のネオジオポケットカラー用ソフトで、確かCDも付属していないのですが、代わりにちょっとエッチな描写があります。本体の時間設定によって発生するお色気イベントの存在もあるとか。

時間設定によって発生するイベントは未確認ですが、無印『ポケットラブ』でのデート描写に比べて意味深なものが多い気がしますね。上の画像は海水浴デートでの一幕。人気の少ない岩場に誘ってOKをもらうとこんな展開に……。

エッチかどうかはともかく、『ポケットラブ』はシリーズ通してこんな感じで濃いゲームです。女の子の面倒くさいところも含めて好きという方には大変おすすめですよ。イベント絵がないので『ぼくたちのギャルゲークロニクル』の制作時には「絵的に映えない」という理由で惜しまれつつも掲載が見送られましたが、良作だと思います。

今回はなんだか生々しい話が多かった気がしたので、心の浄化用に告白シーンの画像を置いておきますね。

なんだか今回は長くなっちゃいましたがこの辺で。また次回もよろしくお願いします。

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