第27回:X1でFM音源を使いたい!その③

前回までで悪戦苦闘しながらどうにか乗りこなそうとしていたステレオタイプFM音源ボードに付属の付属のミュージックツール『VIP』ですが、頑張って作ろうにもスペックの限界が見えてきてかなり気が折れてきていました。相変わらずベーマガではPC-8801mkⅡSRやX68000用の音楽リストが多数掲載されており、その輪の中に入れないX1ユーザーとしては歯がゆい思いをしていたものです。

「こんなにハイスペックのFM音源を搭載しているのにベーマガにX1の名前がないなんて!」

掲載ページを眺めながら、そんな想いが募るばかりでした。

捨てる神あれば拾う神ありとでもいうべきでしょうか。そんな私の想いが天に通じたのか、いくつかのアプローチによるBASICサブルーチンが雑誌上に公開されることとなります。

ちなみに以後散々登場するMMLという単語は(ミュージック・マクロ・ランゲージ)の略でして、簡単に説明すると「音楽の演奏データを記述するための専用言語」。古いBASICをご存知の方はPLAY文のようなものといえばお分かりかと思います。

PLAY”CDEFGAB”

と入力すればパソコンから“ドレミファソラシ”と鳴りまして、要はドイツ語の音階がベースになっています。

祝一平版MML(Oh!MZ1987年6月号~7月号)

シャープ系パソコンの専門誌、Oh!MZ(日本ソフトバンク)で連載されていた「試験に出るX1」内で公開されていたMMLで、作者は故・祝一平氏。元々、同連載自体がX1の様々な機能に毎回スポットを当てて詳しく紹介するというものなので、X1のFM音源を使いこなしたいというユーザー本位で作られたものではありません。

実は私はこのMMLを打ち込んで使ったことがないため、出来の良し悪しについては正直わかりません。記事を読む限りはメインメモリ上で最低限のMMLを再生させる、後述のFM音源ドライバーに近いアプローチのようです。

FM音源ドライバー(マイコンBASICマガジン1987年9月号)

言わずと知れたマイコンBASICマガジン(電波新聞社)に掲載されたMMLで、作者はGORRY氏。当時ベーマガの愛読者だった私は早速プログラムを打ち込んだのですが、X1のHu-BASICに搭載された本来のMMLとも、かといって当時期待していたX68000のX-BASICのものとも違っていたため、それほど弄り倒さずに触るのを止めてしまっていました。

というより、X1のMML自体が特殊過ぎたんですよ。なんたって「3」が8分音符で「5」が4分音符でしたから(音楽の素養がない人がHu-BASICを開発したんだろうなぁ)。

NEW FM音源ドライバー(マイコンBASICマガジン1988年3月号)

いよいよ真打ち登場、マイコンBASICマガジンに掲載された新しいMMLです。作者はFM音源ドライバーと同じくGORRY氏。グラフィックVRAMをストア領域に使用して48KBもの音楽データを持つことができ、X68000とほぼ同様の命令系統を持ち、おまけにBGM再生までできる。これこそ私が待ち焦がれていたシロモノでした。

X68000用に掲載された音楽プログラムが完全な形で我が家のX1Gで再生された時にはとにかく感激でして、以後はベーマガやその他別冊に掲載されているX68000用のプログラムを片っ端方打ち込む日々が続くこととなります。

誌面に掲載されたプログラムを入力するだけで、レベルの高いゲーム音楽が次々と再生される。この喜びは本当に何物にもかえ難かったですね。

NEW FM音源ドライバーを手にした以後は、さぞやFM音源漬けになるかと思いきや、意外にも自分で曲を作ることはあまりせずに違う方向に熱中するようになっていきます。「違う方向」とは何なのか? 次回ではその辺のお話をしたいと思います。

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ABOUTこの記事をかいた人

1972年愛媛県松山市生まれ。アーケード、家庭用、PCはもとより美少女ゲームまで何でも遊ぶ、ストライクゾーンの広い古参ゲーマー。ただし、下手の横好きがたたり、実力でクリアできたゲームの数は決して多くないのが弱点。