『プレイステーション3パーフェクトカタログ』発売に寄せて

 2020年に『プレイステーションパーフェクトカタログ』、2021年に『プレイステーション2パーフェクトカタログ』ときて、2024年末にいよいよ『プレイステーション3パーフェクトカタログ』の登場と相成った。最初に『プレイステーション~』を書いたときに「3はやりたくないなぁ」などと周囲に漏らしていたものだが、熱心なファンの皆様に支えられて結局作ることになってしまった。できないできないと思いつつ、いざ始めてしまえばどうにかなるものである。

 さて、プレイステーション3であるが、発表当時に感じた感想が「これはゲーム機と呼んでいいものだろうか?」であった。開発に5000億円を投じ、スーパーコンピューターに匹敵するパフォーマンスをひねり出すCPU、分散コンピューティングを可能にする強力なネットワーク機能、Blu-rayはもちろんSACDの再生までできるうえ、DVDやCDに至ってはアップスケーリングまでこなし、7.1チャンネルサウンドや4K出力すら可能……性能をひとつひとつ挙げれば挙げるほど、ゲーム機の範疇を大きく超えたマシンであることがわかる。「この機械を使ってどんなゲームが遊べるだろう?」ではなく「この機械がどんな未来を見せてくれるのだろう?」という、まったく将来像の予想が想像つかない初めてのゲーム機だったのである。

 本体の価格を発表したときに久夛良木健は「安すぎたかも」と発言しているが、なるほどソニーの持てる技術を全部詰め込んだこのハードであれば、そう発言したくなる気持ちも今ならよく分かる。なにしろ、一切の妥協を許すことなく、氏が思い描く最高のゲーム機(の名を借りたメディアサーバー)を作り上げてしまったのだから。

 最終的な収支でいえば成功したとはいえ、メーカーにもユーザーにもプレイステーション3というハードの本質がなかなか伝わらず、当初の販売戦略は苦戦続き。その結果、プレイステーションおよび2で築き上げたシェアトップの座を任天堂のWiiに譲る格好となってしまった。しかし、プレイステーション3が提唱したダウンロード販売や配信事業、サブスクリプションといったサービスはいずれも後のゲーム機ではごく当たり前の機能として定着し、しかもプレイステーション3の性能抜きでは実現し得なかったものばかりである。そう考えると、久夛良木健がプレイステーション3で指し示した未来は決して的はずれなものではなく、むしろゲーム機の将来像を的確に見抜き、正確に予見していたといえるのではないだろうか。

 本書ではプレイステーション3本体をはじめ、全ゲームソフト、周辺機器、関連製品に至るまで可能な限り詰め込んだ。複雑で巨大なシステムゆえにどうしても駆け足となってしまったが、本書を通じて、プレイステーション3の魅力を再発見していただき、氏の思想を知る一助となれば本書を制作した者として至上の喜びである。

 

本テキストは『プレイステーション3パーフェクトカタログ』まえがきを再掲載しました。

ABOUTこの記事をかいた人

1972年愛媛県松山市生まれ。アーケード、家庭用、PCはもとより美少女ゲームまで何でも遊ぶ、ストライクゾーンの広い古参ゲーマー。ただし、下手の横好きがたたり、実力でクリアできたゲームの数は決して多くないのが弱点。