とんがりギャルゲー紀行 第134回:シャイニング・ブレイド

 さて、本日もとんがったゲームを紹介していきますよ。今回ご紹介するのは、プレイステーション・ポータブルのタイトル。ファンタジー世界を舞台とするシャイニングシリーズの1作です。

シャイニング・ブレイド

 セガがリリースしたRPGです。特徴的なのは、歌姫(ローレライ)の力を持つヒロインたちに歌わせることで戦闘中に様々な効果を得られるフォースソングの存在。声優陣がやたらに豪華で曲のクオリティも高いので、筆者は当時CDを延々と聞いておりました。ゲーム中で使うのは毎ターン回復するやつと攻撃力が上がるやつばかりでしたが。

 ゲームは、拠点にいるキャラクターと話してミッションを受注し、戦闘にお出かけする形で進行します。『モンスターハンター』シリーズなどと同じと言えばわかりやすいでしょうか。で、戦闘ではゲージを消費しながらフィールド上を移動し、敵が射程圏内に入ったら攻撃して倒していく形式です。各キャラクターを動かすときは近くにいる味方と組んで移動したり、連携攻撃やフォース技(スキル)を活用して勝利条件の達成を目指します。

 ざっくりとゲームシステムを説明しましたが、本作のとがったところはストーリーにあります。
 大まかなお話は、現代日本から異世界に召喚された主人公・レイジが霊刃使い(ソウルブレイダー)の勇者となって仲間と共に悪の帝国と戦う王道のそれ。
 主人公が周囲の環境や人について何も知らない状態から始まるいわゆる“召喚もの”って、主人公とプレイヤーでそのゲームの世界に関する知識量に差がないから感情移入しやすいんですよね。それが人気の題材になった理由のひとつだと個人的には思うのですが、本作に関してはその、日本からこんにちは的な初期イベントや、女体化できちゃう愛剣や美人師匠との出会い、修行タイムも済ませている状態からゲームスタートとなります。思い切った構成ですねえ。

 このカットされた下りで、主人公は召喚した国の巫女だというローゼリンデなるヒロインと心温まる交流をしておりまして、敵に敗北を喫したことで彼女と過ごした場所も彼女自身も敵の手に落ちてしまっていると。
 ゲーム本編は敗北した主人公が浜辺に打ち上げられるところから始まるので、リアルローゼリンデ――あまり知らない人なので敬称がないと失礼でしょうか――ローゼリンデさんはいきなり悪堕ち状態で登場します。

 彼女が敵として登場するたび、主人公は何度も「ローゼリンデぇーーっ!!」「ローゼリンデーーーっ!!」と悪堕ち美女の名を叫びます。主人公的にはどうしても取り戻したい女性らしく、保志総一朗の演技力もあってなにやら悲壮感が出ておりますが、プレイヤーにとってはさして知らない女。回想シーンで見た人だな、くらいの印象です。その回想シーンもちらりちらりとある程度なので、主人公ほどの感情を彼女に対して抱けません。話にいまいちついていけず、まるで異世界に突然放り込まれた一般人のような気持ちが味わえます。設定に忠実だね。

 世界観のチュートリアル的な初期イベントは省略され、主人公だけこの世界に馴染み、プレイヤーは置いてけぼり。知らない人(過去作キャラ)が馴染み顏してどんどん味方に合流してきますが、一体どこのどちら様なのかと疑問に思いつつ、誰なのよとはとても聞けない圧倒的アウェー感。「知らない人だけど仲間になってくれるならいっか」でスルーせねばやってられません。
 おまけに、会話ではシリーズで使われる専門用語も飛び交うので、過去作の知識がないと知らない人に囲まれてよくわからないことばかり話されることになっちゃいます。小さい頃に行った遠い親戚の葬式とか、こんな感じでした。
 空気読みスキルが求められるこの感覚、なるほど日本人が異世界に呼ばれるわけだぜ。完全に理解したわ。

 初めてプレイした時は、続きものを2作目からプレイしてしまったのかと戸惑いましたが、違うんですね。過去作のキャラがほぼ説明なしに出てくるだけで、一応は本作のみで完結しているお話なんです。ついでに言うと、本作で描かれなかったプロローグは小説版に収録されています。
 プレイ当時は過去作を遊んでおくべきだったかなと思いましたが、その過去作のキャラクターも死んだことになっていたりもするので、過去作の知識があってもそれはそれで辛かったかもしれないのが難しいところ。

 このゲームのジャンルって、“RPG”なんですよ。ロールプレイングゲーム。プレイヤーは主人公の役割を担うんです。それなのに主人公と経験を共有できないなんてどうすりゃいいのか。ロール(役割)をプレイングできそうにありません。
 なんだかこのゲームをプレイした後は、転校生にとっても親切にしてあげたくなりました。既に人間関係ができ上がってるところに入っていくのって大変だよね。わかるよ。そんな優しさが得られます。

 続編ものでもないのに「ゲームのはじまり≠物語のはじまり」なのって、こんなにネックになるものなんですね。私たち、出会い方を間違えてしまったのね。そんな気持ちになりました。
 ストーリーは小説で補完できるといっても、ゲーム単体で売りに出している以上、話は作中で完結させるべきでしょう。Tonyがキャラクターデザインを手掛け、超豪華声優陣が声を当てているだけあってヒロインは魅力的なのにもったいないことです。むしろキャラゲーだから細かいところは気にするなということなのかしら。確かにやたらと顔も声もいい子が揃っています。

 納得のいかないところがあるだけで、歌は良曲揃いでヒロインが大変可愛いらしいので総合的にはわりと好きなゲームです。当時文句を言いながらもフリークエストまで制覇して最後までクリアしましたし。不満があったストーリーでも、本編開始以降に出会うキャラクターのことはちゃんと描写されますしね。ローゼリンデさん……。
 恋愛要素もあるタイトルですが、全ヒロインを同時攻略可能なので周回しなくてもまるっと楽しめるお手軽さも実によし。よければキャラクターソングだけでも聞いてみてくださいね。そうしたらゲームも遊びたくなるかもしれません。

 さて、それではこの辺で。また次回もよろしくお願いします。

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