とんがりギャルゲー紀行 第64回:ヘルファイアーS

さて、本日もとんがったゲームを紹介していきますよ。今回紹介するのはこちら。

『ヘルファイアーS』

PCエンジン向けにリリースされた作品ですが、東亜プランが開発したアーケードゲーム『ヘルファイヤー』がもとになっています。『ヘルファイヤー』は東亜プラン初の横スクロールシューティングで、タイトーの下請けだった同社が初めて自社名でリリースした作品だったりと特徴的な(でもややマイナー)タイトルですが、そっちはギャルがおりませんので今回はオフィスKが移植開発したPCエンジン版を紹介していきますね。

個人的には、東亜プランのシューティングといえば無骨・豪快・男らしいというイメージがあるのですが、本作では大胆なアレンジが加えられているのでちょっと雰囲気が違っています。

美少女パイロット2人が主人公に据えられている点が大きな違いでしょうか(『ヘルファイヤー』の主人公は男だった)。オープニングやステージ間のデモでストーリー表現が強化されています。アナザーストーリーなのでアーケード版とは違うお話になっていますけどね。 金髪の子と青髪の子をそれぞれ冬馬由美、原えりこが務めているほか、池田秀一なども出演していて声優陣は豪華です。キャラクターデザインは北爪宏幸。『機動戦士ガンダムΖΖ』や『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』などを手掛け、アニメの動画や原画も経験しているバリバリのアニメ畑の方ですので、ビジュアルデモの完成度も高いんですよ。構図もカメラワークもすごくいいですし。

上にある画像のようにちょっとしたお色気シーンもありますが、悲愴な世界観なので単純に萌えゲーというわけではありません。というかこの頃はまだ萌えという概念が一般化していませんでしたし。ちなみに本作は1991年4月発売で、萌えの概念が一般化したのは2000年代です。

ゲーム面では原作と仕様は共通で、前・ 後ろ・上下・斜め方向に発射する4種の兵器を使い分け、くぼみに潜む砲台や敵を破壊するテクニカルなゲームになっています。このごんぶとなビームから東亜プラン感がほとばしっていますね。

後ろショット
上下ショット
斜めショット

どのショットを使ってその場を切り抜けるかという判断は、覚えゲ―と言い切れるほど複雑ではありません。序盤は敵の出現から攻撃まで間が大きいので、プレイしていくなかでどうショットを切り替えて使うかという判断を手に馴染ませていくことができます。まあ難しいことは難しいのですが、コントローラをぶん投げるほどではないと思いますよ。

一度ミスするとショットの威力が最低になるのでそこはちょっと辛いですけど。ボス戦は特に厳しいですね。上の画像のやつは四方から弾撃ってくるわ正面に来たヤツは火吹いてくるわで死にまくりました。自機のサイズに比べて当たり判定は小さいので見た目ほど大変ではないのですが……。

大きな敵には複数個所に武装が取り付けられていて、4種のショットをすべて駆使してやっと無力化できるものもいます。自機の特徴をきちんと生かせる場面が多いのがこの作品の面白いところです。

プレイ中にアーケード版と違うなーと感じたのは、プレイ感覚ではなくBGMですね。オリジナルにアレンジを加えたものが使われているのですが、これがなかなか良アレンジです。美少女が戦う本作の内容に合ったキレイな音で、しかしながら戦いの悲壮感も伝わってくる気がします。

親しい人を敵の襲撃で喪い、無事と聞かされていた南米基地も敵の手に落ち、主人公たちはどんどん苦しい状況に追い込まれて行きます。
外宇宙からの救援を待とうとしていたところに敵要塞が出現。 金髪の子は衝撃で故障した戦闘機では逃げられないと悟り、追いすがる友人と最期の会話をしながら特攻をしかけます。

アーケード版そのままを再現したバージョンも発売予定だったらしいのですが、実現せずに終わってしまったのだとか。他に『ヘルファイヤー』の移植はメガドライブ版しかないはずなので、本作は貴重な一作といえるかも。

もの悲しいエンディングも含め、なかなか心に残るゲームです。東亜プラン作品に対して「かくあるべし」というイメージがあったり 『ヘルファイヤー』に思い入れがある人には受け入れがたいのかもしれませんが、プレイしてみた感覚では遊びやすくてバランスも良好ですし、音楽も移植版の雰囲気に合っていて良いと感じました。

賛否両論な評価となっている本作ですが、食わず嫌いしていた方にもぜひ遊んでみていただきたいところです。 リリース当時はかなりセクシーに見えたシーンも今見るとそれほど過激でもないでしょうし、今はロボットアニメでも女の子がガンガン出撃してバンバン死んだりする時代ですし、かわいい女の子が戦闘機に乗っていても抵抗は感じにくくなっているのではないでしょうか。

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