第5回:『グラぴゅうス』の巻

グラぴゅうス1

ちょっと裏こいや

おっとあんちゃん、肩が触れたね、挨拶無しで行こうってのはどういう了見だ、ちょっくらそこのBEEPさんの裏までツラ貸し・・・なに、ぴゅう太買うので急いでる、そうか、ちょっと待て、ひい、ふう、みい、よ、千円札5枚しかやれねえけど、これで「スクランブル」も一緒に買って楽しく愉快に健やかに遊びな、なに、いまは消費税8%がつくだと、5184円ねえとカートリッジ1本も買えねえのか、世知辛え、つくづく、世知辛えご時勢だねえ・・・。

箱絵背表紙

箱絵背表紙

宇宙がまるごとやってくるかもしれない昨今、皆様におかれましては如何お過ごしでしょうか。前回、スペースシューティングゲームのロマンについて少々触れさせて頂きました。今回は、そのスペースシューティングゲームのロマンの結集ともいえるのではないかと思われる「グラディウス」からヒントを賜り作らせて頂きました、ぴゅう太買えやソフト第五弾「グラぴゅうス」につきまして。そしてツイッターというネットサービスによる人との繋がりと、コンピュータゲームが大好きなおじちゃんおばちゃんたちと、これからコンピュータゲームを作ってみようかなあと思っておられるあんちゃんおじょうさんがたについて、作文させて頂きたく存じます。何卒、宜しくお願い致します。

カセットテープ

カセットテープ

アニメを活用したい

第四弾までぴゅう太買えやソフトを作り終えたところで、ふと、アニメを活用したゲームが「ザナぴゅう」のみであることに気がつきました。いくらセル同士の当たり判定の仕組みが解明したとはいえ、せっかくのアニメをセル隠しにしか使わないのはもったいない。そこで第五弾のゲームではアニメを使ってみようと思い立ちました。セル隠しというのは「マイコンBASICマガジン」での投稿プログラムなどでもよく使われていたぴゅう太独特のプログラミングテクニックのひとつで、ぴゅう太ではグラフィック画面上のセルにG-GRAPHICで絵を描くことで他機種でいうところのPCG定義と相成るわけですが、このままではその定義したキャラクタがグラフィック画面上でそのまんま遊び手に見えてしまいます。そこでセルより表示優先度の高いアニメを上に被せて、キャラクタ定義に使用したセルを隠してしまうのです。

「イース」だよマジかよおい

同じころ、尊敬する方がぴゅう太で「イース」を動かすという素晴らしい偉業を成し遂げられツイッターにて発表されておられました。これは最後まで遊べるのですかと伺いましたところ「それにはメモリが足りないのです」とお答えを頂戴致しました。なるほどなあと心からの感謝と納得をし、ぴゅう太の上で動く「イース」に感動をしたところで。そういえば「イース」にはボスキャラクターがいっぱいいて、それぞれが個性的な攻撃をしてくるなあ。自分は日本語G-BASICしか使えないから「イース」の移植なんて夢のまた夢だけれども。もしかしてあのボスを一体ずつ、あくまでそれっぽくではあるけれど、日本語G-BASICで再現できるのではないかしら、などと考えました。

おでき

紙の上で考えをまとめて、「イース」の最後のボスであるダルクファクトという黒いポンチョ着て頭に角みたいなでっかいおできがあるおっさんがおられますが、あの動きなどを再現できないか、などと検討しておりましたところ。なんとなくぴゅう太で「スクランブル」を遊び始めて、おお、そうだ、「グラディウス」も面ごとに個性的な攻撃を仕掛けてくるけれど、あれももしかしたらアイデア拝借できるのではないかしら、と何故か「イース」から「グラディウス」へ、すなわち「優しさ」から「宇宙」へ思考が移ってしまいました。

グラぴゅうス1

グラぴゅうス1

やっと固まった基本方針

「イース」や「グラディウス」などなど、世の中にはたくさんのコンピュータゲームが存在しますが。そのどれもこれもがアイデアを溢れんばかりに詰め込まれていて本当に心の底から素晴らしいと思うのです。そして、「ザナぴゅう」作成時においてもそのヒントを得ていたのですが。ここではっきりと。日本語G-BASICにおける制限にて、それら素晴らしきアイデアの全てを真似ようなどと自身の身の丈に合わぬことはせず。そのうちのほんの一握りでも再現できたら、いや、再現できなくてもいい、そのアイデアから自分が作成し得る限りのひとつのゲームへと発展させられたら。そこに自分の胸のうちにある世の全てのコンピュータゲームへの敬意を、感謝を、表すことがほんのちょっぴりでも出来たら、というぴゅう太買えやソフトの基本方針のひとつが固まったのです。

慣性

「グラディウス」の火山の噴石を再現しようと決めたのですが、はたと困りました。自分は慣性のプログラムを組んだことがなく、遥か昔に「マイコンBASICマガジン」にてそのアルゴリズムの解説を読んだ記憶はあるものの、それがどの号かさえ分からなくなってしまいました。そのことをツイッターにて吐露致しましたところ、やはり尊敬する複数の方々が懇切丁寧に教えてくださいました。その実に分かりやすかったことといったら。また最初に決めたとおりアニメを使うゲームとするために隕石をアニメで描いたのですが、「ぴゅう太のアニメで動かすのならばこうしたほうがそれらしい動きにみえると思いますよ」というありがたきアドバイスまで頂きました。そのおかげで何の苦もなく、一度の失敗さえなく、自分の中でプログラムの仕組みと動きを深く深く納得しながら、隕石に慣性をつけて動かす大元となるプログラムが完成致しました。教えてくださった、アドバイスをくださった方々に心より感謝致しております。この基礎のプログラムを元に、ゲーム作成に一気に拍車がかかりました。

グラぴゅうス2

グラぴゅうス2

そして「グラぴゅうス」を悔いなきところまで

ゲームの題名は「グラぴゅうス」に決めました。それ以外に考え付かなかったからです。また、それならばロゴも作りやすそうだなあとも思いました。そしてアーケード版やX68000版、MSX版やファミリーコンピュータ版の「グラディウス」の画面写真を参考にしながら、ロゴや火山の画面をG-GRAPHICにて描いていきました。

自分は作りかけのものなど、途中経過を人目に晒すのはあまり得意ではないのですが。このとき、火山をどうしてもG-GRAPHICでうまく描けませんでした。何をやっても岩肌にみえない。MSX版「グラディウス」の、まさしく神業、職人芸という言葉がふさわしい素晴らしいグラフィックに改めて驚きと感動と、そして他者と比べて自分のような文化的に劣る人間にその高みに近づくのは困難極まりないことを、確認してしまいました。思わず「まあいいや」と妥協してしまいそうになりましたが。その前にツイッターに自分の描いた画面写真をアップロードし、人様に見て頂いたところ。笑われてしまいました。やはり自分が妥協をしようとしたところは人様は分かってしまうのだなあと思い、反省し、笑って頂いたことに感謝致しました。そしてそのおかげで、正直なところ完成版の画面もまだ納得しきってはいないのですが。自身の妥協のないところまでは、悔い無きところまでは描ききれました。

火山

火山

ゲームルールの作成と調整

火山画面を作成している最中、パワーアップ欄をどう活用できるか考えておりましたところ。あ、これルーレットにできる!と、そして最終的なゲームルールまで思いつきました。

そうだルーレットだ、隕石をビックバイパーいやビックパイパンにぶち当てるゲームにすればいい、そうだ、ぶち当てるんだ、ぶち当てたときの点数をルーレットで決定すればいい、そうすれば、隕石をビックパイパンに当てるタイミングを遊び手が選ぶ、ゲームになる、やった、ゲームになるぞ。

ルーレット

ルーレット

勢いがついて、どんどん作成を進めていきました。正直あとになってこれは蛇足だったか、もしくは練りこみ不足だったかなあと思ってはいるのですが、シュートボタンを押して隕石の慣性を一時的に打ち消し、軌道を変えるというギミックもメモリの中に収めることができました。ルーレットには「グラディウス」に倣い「?」欄を設け、ここは低得点から高得点までをランダムで獲得できるミステリー得点としました。さらにメモリにまだ余裕がありましたので、ゲームオーバー後にシュートキーを押して再ゲームとなるようにしました。これまでのぴゅう太買えやソフトはこのゲームオーバー後の処理さえメモリのパンクで入れるのを断念していたのです。手前味噌になり恐縮ではあるのですが、「グラぴゅうス」は日本語G-BASICで作成したゲームとしては色々なギミックを詰め込むことができたのではないかと思います。

最後にテストプレイを繰り返し、1000点前後から1500点くらいの点数で競えるように調整をしました。2000点を超えることができたら、かなりゲームが上手なのではないかと思います。

得点

得点

心よりの敬意と感謝を捧げます

「グラぴゅうス」が完成し、はっと気がつきました。パワーアップ欄をルーレットとするアイデア、「パロディウス」でとっくに実現なされているのでした。ああ、やっぱり自分のような半チクもんなどが、先達の方々には、どこまでいっても、どこをとっても、かなわない。かなうわけがない。古いコンピュータゲームにはあらん限りのあらゆるアイデアと、それを当時の性能のコンピュータ上で実現しようとなされる挑戦精神が、全て込められているのです。だからこそ自分はコンピュータゲームと、それらに関わった方々に敬意を、畏敬の念を感じずにはいられないのです。

そして、ツイッターで沢山の方々から賜った刺激、ヒント、知恵、知識、アドバイス。これら無くして「グラぴゅうス」は絶対に完成致しませんでした。この場をお借りして、深く感謝申し上げます。ありがとうございました。

箱絵

箱絵

恐縮ながら、お耳を拝借申し上げます

もしこの記事を読んでくださっている子どもさん、もしくはこれからゲームを作りたいと思っているけれど技術的なことやらなんやらで気後れしているあんちゃんやおじょうさんがおられましたら、ちょっとおいちゃんの話に耳を預けておくんなさい。古いコンピュータゲームを愛するおじちゃんおばちゃんがたってのは、ちょっくら理屈っぽいとこもあったり。同属嫌悪みたいな喧嘩も絶えなかったり。少しばかり鼻っ柱がつええわりに肝っ玉のほうはちいせえかなあなどと感じたりすることもあるけれども。そんなことが恐ろしくちっぽけなことと思えるほど、どいつもこいつもみんな揃いも揃って、人の根が優しいのです。こんなチンケな三下風情の自分にまで、惜しみなくいろんなものを授けてくださるのですから。だからあんたがたも、怖れることなく気後れすることなく、ゲーム作りに挑戦してみてください。そして何か分からなくなったら、行き詰ってしまったら。いまはツイッターやその他たくさんの、正しく使えば非常に便利なネットサービスがありますから。そこで古いコンピュータゲームを愛するおじちゃんおばちゃんがたにアドバイスを求めてみてください。あんたがたが常識や礼儀をわきまえてさえいれば、きっと必ずや助けてくださいます。この前田さんのホームページもそうです。ゲームを作る、知るうえでのヒントが惜しげもなく詰まっています。自分の記事はその中において賑やかしみたいなものであるので斜め読みで宜しいかと存じますが、ともかく他のおじちゃんがたの記事は隅から隅までぜひ読んでみてください。きっとゲームについて、前へと目を向ける助けと、あるいはきっかけとなるはずです。

良いお年を

最後になりましたが。この「グラぴゅうス」の箱絵もまた、poipoiさんが遊ぶ前だという無茶にも関わらず、画面写真のみでイメージをおこし作成してくださいました。感謝しきりです。さて、2017年も終わりますな。今年は皆様にとって良き一年であったこと、そして来年も良き一年であることを祈り申し上げます。良いお年をお迎えください。失礼致します。

 

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