とんがりギャルゲー紀行 第119回:神採りアルケミーマイスター

 とんがったゲームを紹介する前に、本コーナーの書籍版の宣伝をさせてください。前回の田中ロミオ先生執筆記事宣伝記事でも既にお知らせしているとおり、本コーナー「とんがりギャルゲー紀行」の初めての単行本が発売されます。発売日は9月28日。
 内容はこれまでの記事から厳選した30記事に書き下ろしの2記事を加えたものです。といっても、Webで公開中の記事もそのまま収録するのではなく、大量の加筆修正を加えています。書籍化にあたって加筆修正を加えていないタイトルは1つもありませんし、ほぼ書き直した記事もあるくらいですので、本コーナーを読んでくださっている方にも、そうでない方にも楽しんでいただける内容になっていると思います。

 ちなみに、書き下ろし記事は『ネコっかわいがり! ~クレインイヌネコ病院診療中~』『いつか降る雪』の2タイトル。

 『ネコっかわいがり! ~クレインイヌネコ病院診療中~』はネコミミ娘の発情をエッチで解消する萌えなゲームかと思いきや、後々胃が痛くなるようなお話が展開するタイトル。

 『いつか降る雪』はヒロインが炎に巻かれながら「やっぱり神様なんていなかったね」と書いたスケッチブックを掲げるという非常に鬱なイベントCGで有名なタイトルです。いま気づきましたが、胃に悪いのばっかり書き下ろしてますね。

 詳しくは単行本の中で色々語らせていただいておりますので、ぜひご一読ください。

 また、最後の章には田中ロミオ先生の書き下ろし記事も収録。
 ヒロイン全員眼鏡っ娘なゆるやか終末もの『終末の過ごし方』や、『To Heart』の登場人物が共産主義社会を逞しく生きる物語を描いた問題作『既知街』など、本コーナーでも未公開の記事もありますので、田中ロミオ先生のファンの方にもお手に取っていただきたい本となっております。

 また、田中ロミオ先生には今回の本の帯に推薦コメントも書いていただいております。

 帯で男の娘のもっこりを隠すギミックを仕掛けたつもりが、Amazonは帯なし画像を載せるのが通例だったようで、早々にもっこりが暴かれてしまいました。ロミオのミの字をもっこり隠しにするなよって色んな人から怒られそうな裏話。やはり悪事は暴かれるものなのか。
 本の内容やら帯やらが気になる方もそうでもない方も買ってくださるとありがたいです。チンズリーナ先生の素敵なイラストが目印ですよ!

 さて、そろそろ今回のゲームの紹介と行きましょう。驚異のむちむち太ももで注目を集めた『ライザのアトリエ』が、アトリエシリーズでは珍しい続編の発売まで決定したというニュースがちょっと前にあったので「錬金術」を扱ったゲームにしてみました。

神採りアルケミーマイスター

 エウシュリーによるエロゲーです。ジャンルは知識採集+工房運営+戦術シミュレーションRPG。同メーカーが複数作品で共有するファンタジー世界「ディル=リフィーナ」を舞台にしたお話です。
 2011年発売なのでちょっと前のゲームではあるのですが、物作り要素や収集要素がたっぷりで遊びがいがあり、今でも十二分に楽しめるゲームだと思います。

 物語の中心となるのは、各国の技術が集う物作りの街・ユイドラ。
 工匠が集まり、工匠会によって統治される工房都市ユイドラで暮らす青年・ウィルフレドが自らも工匠となって自分の工房を運営し、素材を求めて冒険したり、他種族の仲間たちとの交流によって知識を深め、さまざまなクエストを成し遂げ、街の中心人物に登り詰めていく物語となっています。

 各採取地での戦闘パートは戦略SLGのようになっています。拠点からマップに出撃するキャラクターを送り出し、定められた条件を達成する(または脱出ボタンを押す)とクリア。
 採取や発掘ができるスポットもあるので、採取地は戦闘だけでなく素材集めの場でもあります。
 主人公側の勢力が占有した場所は青く表示され、マップを100%占有するとお金を獲得できるという探索&踏破への動機付けも有り。
 特定のスキルを付けていると発見できる場所や、特殊な鍵を所持していると通れる場所もあるので、宝探し気分であちこち探れるわけですね。フリーマップを除いたほとんどのマップでは、隠し条件を達成するとさらに他のアイテムを受け取れるのも嬉しいポイント。

 地形に属性があり、火や水、雷、土、空中などの特殊地形を通るには各地形に適応するスキルが求められます。スキルはキャラクター自身のものであったり、アイテム装備で補完可能。スキルや装備は現地でも付け替えできるのが便利です。

 戦闘においてもキャラの耐性、技の属性の相性によってダメージが大きく増減するので、戦闘に有利な属性武器、各マップで有利な耐性を持つ装飾(アクセサリー)を作る動機付けになっています。
 作ることができる物の中にはヒロインの衣装もあり、行き先に合わせて耐性に特色のある各衣装に着替えて採取に出かけることが推奨されるのです。各衣装姿でのえっちなシーンももちろん完備しておりますよ。

 物作りを中心とするゲームシステムと、エロ&ストーリーをしっかりと結びつけているわけです。
 作品のウリを自ら潰す設定にしてしまっているゲームってたまにあるんです。その点を押さえているのは大変によいことですよ。
 エロゲーのゲーム性のある要素というと、どうも取って付けたような、エロが良ければ許される「まあこんなもんでしょ」感があるものが多いように思います。
 といっても、ゲーム作りはメーカーの規模や資金力で1作にかけられる時間が異なりますし、趣味で時間を好きなだけかけても許される同人とも事情が異なるのでしょう。理想に技術と内容を追いつかせるのは大変ですからね。
 が、そこへ行くと本作は真っ当に楽しめる。これがどれだけ価値あることか。かといって「じゃあエロは要らないんだね」と取り上げられたら憤怒するけども。逆鱗だぞ。

 工房運営パートについてもご説明致しましょう。
 工房兼住居である主人公の家は、店舗、部屋、工房、庭園の4カ所に分かれていて、それぞれに適した家具を設置することができます。

 家具には効果があるものも多くあります。
 例えば店舗なら集客力や商品の価格を上げるもの。
 工房なら物作りに必要な材料が減るものや作ったアイテムが突然変異する可能性を上げるもの。
 庭園なら畑や木、水晶窟、星々からの飛来物跡など、さまざまな材料を自動採取できるものなど。
 あとはダブルベッドや温泉といった、イベントに関連付けられているものもあります。
 家具による装飾がただの趣味で終わらず、イベントのための仕掛けや効率的な物作りのための手段になっているわけです。細かい作り込みですね。
 工房兼住居は拡張し、さらに家具を置く場所を増やすことも可能。各所の拡張は主人公が新たな称号を得る条件にもなっています。

 ちなみに、工房の運営には少額とはいえ毎日必要経費が発生するので、お店でアイテムを売り出すことも大切。赤字になっても一度は立て替えてもらえますが、二度目はゲームオーバーになるので注意。売却用アイテムを全処分してまで衣装の強化や工房の拡張にお金をつぎ込んだ挙句、数十日もの大遠征に出かける――なんて馬鹿をやると面倒なことになりますよ(二敗)。仲間を店番に指定し、売り出すアイテムを設定し、お店の家具をあれこれ置いて稼ぎましょう。

 キャラクターのレベルや工房の状態、所持アイテムや素材は、周回で個別に引き継ぎ設定をすることもできます。さらに、キャラクターのレベルが最大になっても「転生」でレベルを1に戻してまた育ててステータスをさらに伸ばすこともできるシステム。2周目以降で発生するイベント、仲間にできるキャラクターなど周回を前提とした要素もあるので、とことんのやり込みが楽しいゲームとなっております。

 ヒロインについて話していませんでしたね。
 ルートがあるメインのヒロインは3人いて、中盤でどのヒロインと結ばれるかが決まり、ストーリーが明確に分岐します。各ルートによって作れるもの、行ける場所がちょっと変化しますよ。

 天使や睡魔(ネコ耳のサキュバスみたいなもの)、水精などの他種族たちがサブヒロインとしており、交流を深めると理解が深まり、各属性に応じたアイテムのレシピが増える仕組み。えっちなシーンももちろんあります。
 主人公は真面目で誠実な性格なので、ルート分岐して恋人ができてからサブヒロインとえっちな関係になるのは不思議な気はします。選ばなかったメインヒロインたちは身を引くから余計に変な感じ。しかし、手を出せなかったらきっと魂が泣くので、まあよしとしましょう。

 ちなみに錬金術を扱ったRPG系の美少女ゲームは他にもあって、2020年にも『創神のアルスマグナ』がナインテイルから発売されています。
 こちらもわりと楽しめるゲームではあるのですが、作成するのは仲間の武器と回復アイテム、耐性強化アイテムくらいで種類はそれほど多くはなく、ほぼ戦闘メインの内容なので錬金要素は薄め。

 遊んでみて改めて本作はすごいゲームだったんだなあと再確認しました。だってこっちは戦闘パート以外にも詰め込まれた要素が多いんだもの。おかげで紹介記事もやたらに長い。お楽しみ要素があまりに多いから、スクリーンショットを撮るのに大変でここ数日あんまり寝てないよ。ほぼ個人の楽しみのために遊んでいただけだけど。

 『神採りアルケミーマイスター』は同メーカーの他作品と共有するファンタジーな世界観やアイテムを登場させているので、1から世界観を作ったゲームを同水準まで持っていくのは大変なのでしょう。モンスターやアイテムをすべて1から考えるのにも時間と手間が取られますからね。
 ゲーム性のあるエロゲーを作るのであれば、複数の作品で共有できる独自世界を構築してあるメーカー(エウシュリーやアリスソフト)のゲームは、まるごと1から作ったゲームに比べると強みを持っているといえるのかも。

 FANZAGAMESで月額いくら払うとエロゲー遊び放題というサービスをやっていますが、あれにエウシュリーのゲームが登録されているのは罠ですね。
 やり込み要素や周回引継ぎシステムが充実しているので、あのメーカーだけで時間が滅茶苦茶食われます。満足度は高いけど、高いからこそ他のゲームになかなか移れないのではないでしょうか。

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