今年の元日に公開された「パンフレットで見るアーケード探訪」にて『わくわく7』を紹介したところ、当時サンソフトで『ギャラクシーファイト』『わくわく7』のディレクター、企画、プログラムを担当されていた植田様から感想をいただきました。そこで、本記事にて謝辞を述べるとともに、私個人の『わくわく7』について語ることで同作への思いを伝えさせていただければと思います。
いきなり期待はずれな言で申し訳ないのですが、私は実は格闘ゲーム全般をそれほどやりこんでいた人間ではなく、メジャー・マイナー問わず主だったゲームを「撫でる程度」に一通り遊ぶ程度で、対戦台に積極的に乱入するガチ格闘ゲーマーではありません。どれくらい素人かというと、初代『ストⅡ』ノーコンティニュークリアできないレベルですから、恥ずかしながらその腕前は推して知るべしといったところです。
その割には移植されたタイトルはメーカー問わず割とせっせと買っておりまして、ギャラリーに気兼ねすることなくコンティニューしまくって自分のペースで楽しんでおりました。サターン版『わくわく7』もそんな中の1作です(残念ながら『ギャラクシーファイト』は未購入。スミマセン!)。
私がアーケードで稼働する『わくわく7』を初めて見たときの感想は「丁寧な作りのゲームだな」でして、とりわけ印象に残っているのは「動かして破綻のない、ゲームに非常に向いたキャラクターデザイン」でした。2D格闘のパイオニアであるカプコンがいて、対抗のSNKが存在する当時の格闘ゲーム市場において柳の下のドジョウを狙うメーカーは数多く、大抵それらのメーカーはカプコン・SNK2巨頭との差別化を図るために過度にアクの強いキャラクターや奇抜なシステムを導入しがちです。しかし『わくわく7』は、後続メーカーでありながら奇をてらう方向を良しとせず、当たり前のゲームシステムを高度にきっちり作り上げる方向にゲームデザインされたものと見受けました。
キャラクターも「メイドロボ」「巨大生物+ランドセル幼女」「戦車ロボ+警察署長」と、一歩間違えればアクの強さでユーザー間口が狭くなりそうな面々でありながら、「個性的ではあるけれどもキワモノではない」絶妙なサジ加減でデザインされており、好き嫌いで左右されにくい万人向けなイメージを定着させることに成功しています。植田様によると『わくわく7』のデザイナーにはアニメーター出身の方もいらっしゃったとのことで、キャラクターモーションの中割りの多さや、華やかな色設計、意外と軽視されがちな画面密度(情報量)といった面からも、その卓越した手腕が伺えます。
私は残念ながらヘッポコ格闘ゲーマーなため、恐れながらゲームシステムとしての『わくわく7』を論じるには至りませんが、アーケードゲームとして極めて重要な要素である「見て楽しさが伝わってくるゲーム」といった観点から大成功を収めたタイトルだと考えています。このトータルバランスの安定感が、本作を「決してメジャーとはいえないながらも熱烈な支持を得る」ポジションにまで昇華させた理由だったのではないでしょうか。
このように、格闘ゲームとしては寡作でありながら後世まで記憶に残る作品となった同作ですが、前作『ギャラクシーファイト』と並んでキャラクターデザイン、ビジュアルデザインを手がけられていた喜多氏が昨年10月に亡くなられています。
とても悲しいことがありました
サンソフト時代からゲムリパ時代まで、一緒に仕事をしていたデザイナーのkita君が亡くなりました。いつかまた一緒にゲームを作りたかったデザイナーでしたので本当に悲しく、残念です・・・— yakopu (@yakopu) October 24, 2017
kita君のわくわく7の最後の作品。Nintendo Switchのロンチでわくわく7が出たときに対戦会があって、その賞品として色紙に描いてもらった…泣ける… pic.twitter.com/uZuIB8tyzH
— yakopu (@yakopu) October 24, 2017
kita君のリツイートたくさんしてもらってるのみて、本当に一緒に仕事できて良かったなーと実感(´;ω;`)ギャラファイ、わく7作ってたサンソフト時代、いいメンバーに恵まれてメッチヤ楽しかったからなー。好き放題やらせてもらったサンソフトにも感謝だわw
— yakopu (@yakopu) October 25, 2017
この場を借りてご冥福をお祈りするとともに、本記事が氏の生み出したキャラクターを記憶として留める一助になれば幸いです。