ゲーセン店員の懐古主義で行こう 第2回:カイザーナックル&ファイターズインパクト

 お早うございます、こんにちわ、こんばんわ。稲波でございます。
 それでは第二回ということで前回の流れの続きといいますか、格ゲーのお話。私が働いていたゲーセンというのがタイトーの直営店でありました。そんなわけで、意識していたわけではないのですが、他社に比べてタイトーのゲームに対して思い入れがあるようです。そんな私がタイトーが作った対戦格闘ゲームを紹介するのは自然な流れなわけです、私の中では。それでは、今回思い出を語るのはこのゲーム、「カイザーナックル」であります。

 

 このタイトル、明らかにタイトーの悪い癖が出ています。正確にはタイトーの経営陣の悪い癖ですが。市場をしっかり(長々)と観察して大丈夫との判断をした上で、売れるとわかったから作れと言うやつですね。このタイトルが出た1994年には「スーパーストリートファイターⅡX」や「THE KING OF FIGHTERS ’94」、そうそう「バーチャファイター2」も登場しています。どれだけ腰が重いかわかりますよね。そんな遅れを取り戻そうと登場した本作、素直に格ゲーを出すだけではだめだと考えたのかキャラクターに走ります。ちゃんと市場を調査したのでしょう、間違いなくユーザーに多かったオタク層に向けて作品作りを行います。パンフレットの表紙はこちら。

キャラクターデザインに結城信輝さんを起用するという素敵仕様。更には声優陣も有名声優を揃えてきます。ど真ん中で主人公ですとばかりに主張のはげしい空手家の和也は矢尾一樹さん、居合使いの梨花は島津冴子さん、暴走族のバーツは置鮎龍太郎さん、南米出身のライザは久川綾さんなどなど明らかにオタク狙い撃ちであります。しかも開発の遊び心というか、開発もオタクだなというか、矢尾さん演じる和也の技に「断空牙」の文字が。矢尾さんの声で断空牙を聞きたい、その一念でプレイ開始。獣を超え、人を超え、そしていま神になるわけです。


こいつがモテない空手家、和也です。
残念ながら、「やってやるぜ!」とは言ってくれません
ダサイダーとかでも言っていたのに……


これが昇竜拳コマンド+Kで出る断空牙だ!

プレイしての驚きとしては、音質がとてもいいことでした。SEもいい音だし、何より声優さんの声がちゃんと聞こえる。いまだと当たり前だろうと言われそうな話ですが、当時は再生速度が早くなっていたりして高めに聞こえたりするのが当たり前でした。そんなことに感激しながらプレイしていたのです。まあ、問題がないかといえばそんなことはなく、絵の再現性がね……せっかくの結城信輝氏であったというのに、

こうなったり、

こうなってしまっています。可愛くない(泣)

 まあ、タイトーあるあるであります。全体的に悪くないんだけど、この一点が残念なんだよなぁという、タイトーらしいゲームであります。この残念ポイントがなければ、もっと売れたのに……。私としてはいつものことであるので、気にしないという選択を取りつつプレイしていたのですが、ここで大問題が。もうユーザーは猛者ばかりであろうと思ったのか、明らかにヘビーユーザー向けに舵が切られていたのです。マジ話、勝てねぇ……
 そんな中、タイトーから、各店舗向けに通達が下ります。その内容を要約すると……

「わりぃ、難し過ぎたからゲームレベルを最低に設定してね。
 クリアできないって文句言われたわ(笑)」

と言うものでした。クリアできた人数は片手で足りるのではないかと言われていましたよ。当時私がいた長崎では実際いませんでしたし。あとで知り合いが一人クリアしたという話を持ってきました。クリアしたというその人はゲームがアーケードからなくなったので基盤買ってましたけど。当時なんであんなに勝てなかったのかと思うくらいにはパターン化できているので、いまはいうほど難易度がきついとは感じないのですけどね、クリアは無理ですが。

 そんな、愛する人には強く愛された本作、続編を発売しようという動きがありました。その名も「断仇牙」


画像はあるもんですね、ネットってすごい。
しかし、ダンクーガというよりもダイノレックスな気が……何でしょうね、この骨。

 残念ながら、実物が稼働することはなく幻のタイトルとなってしまいましたが、ネットで調べてみると難易度調整や技の追加など、ぶっちゃけ遊べるものになっているとのこと。当時としては画期的なトレーニングモードがあったりと、なかなか考えられています。発売してほしかったところではあります。私の想像でありますが、バーチャファイターシリーズや鉄拳シリーズなどがアーケードを席巻している状況を見て「うちもポリゴンで格ゲーだ」と経営陣が言い出し、その結果「ファイターズインパクト」が開発されることになったのではないかと思うのです。

いいゲームだったと個人的には思うのですが、そこはタイトー。システムや操作性は悪くないというかむしろ良いと思うのですがね。キャラクターごとに3つのスタイルがあり、全く違う戦いをすることができる(全キャラではない)とか、なかなかないシステムだと思います。KAEDEの場合はこれ。


大東流合気柔術とテコンドーと壁掛拳から選べる。

しかしタイトーらしく、やっぱり足りないものがあるわけです。それはタイトーが最も苦手としか言いようのない、グラフィック。見てくれが悪いのです。鉄拳3が稼働している横でバーチャファイターのようなポリゴン、挙句に秒間30フレームのカクカク仕様。プレステ基盤の限界かもしれませんが、もっと頑張ってくれれば評判も良かったのにと悔やまれてなりません。せっかくの新貝田鉄也郎先生のキャラデザが全く生かされていないのですよ、トホホ。それではキャラクターの一人KAEDEの選択画面とゲーム画面の差を御覧ください。選択画面だとこう(まあ、絵なんですけど)。

そして、ゲームが始まるとこうなります。

テコンドーを選んだバージョンになります。見ての通り、残念であります。お陰ですぐにアーケードから消えました。ゲームのシステムはレバー入力(ニュートラル含む)+P or K で通常技が変化します。この全てが連携技になるモーションスライドコンボと言われるシステムが搭載され、独自のコンボが組み立てられます。しかし同じ技を二回入れるとヒート状態となり、コンボ数に応じた時間一切の攻撃ができなくなるというハンデ状態になります。こういう斬新なシステムを組み込むところはタイトーらしく、プレイさえしてもらえれば面白いと言わせる作りであるのですが、いかんせんあの見た目ではやりたいと思わせることができないという、とても残念な作品でありました。であるにも関わらず、家庭用に移植してしまいます。そうPS版が存在するのですよ、なにを考えているんでしょうね、本当に。カイザーナックルですら移植しなかったというのに。売れたとはとても思えないんですが……(注:私はタイトー大好きです)しかし、ネットにはファンと思われる方がいらっしゃるわけで。

愛を感じる高画質。キャラ名の下の□がモーションスライドコンボのゲージです。赤くなったらヒート状態と。見ての通りクオリティは高いと思うのです、モデリング以外は。いいゲームだと思うので、プレイする機会があれば、ぜひ!

それではこのへんで。ではまた~

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