『PC-8801パーフェクトカタログ』、無事に校了しました。かなり時間との勝負なのはいつものことなのですが、今回は特に資料が乏しくかなりの難産となりました。何事もなければ5/16に店頭に並ぶ予定ですので、興味のある方はぜひお手にとっていただきたく存じます。
さて、今回はいつもと趣向を変えて、本書のまえがきに書いた原稿をそのまま掲載したいと思います。というか、言いたいことはこの中に全部書いちゃったからなんですよね。
それでは、今までのシリーズ共々、『PC-8801パーフェクトカタログ』もよろしくお願いいたします。
数多くの家庭用ゲーム機の魅力をソフトとハードの両軸から紹介することを目的とした企画、パーフェクトカタログシリーズも2018年にメガドライブを発売して以来、はや丸4年が経過する。「家庭用ゲーム機に及ぼした影響が大きいホビーパソコン」という理由から刊行したMSXとX68000のパーフェクトカタログも好評をいただき、それならばということで今回はホビーパソコン第3弾としてPC-8801をテーマに選んだ。
PC-8801は1980年代の8ビットホビーパソコンを市場を制した名機だが、この機種の全体像を俯瞰した出版物はこれまで存在しなかった。言うまでもなく当方もない作業になることが目に見えており、誰しもやりたがらないというのが一番大きな理由だが、過去のパーフェクトカタログと同じ切り口であれば作れるのでは?という考えから、この度の制作に取り掛かった。
日本のゲーム市場に大きく影響を与えた点で語るならばPC-8801mkⅡSR以降が軸になるべきなのだが、発売ゲームソフトを調べてみると想像以上にSR以前のタイトルが多いことに驚かされる(しかもかなりの名作が「SR以降」でなかった)。当初はPC-8801mkⅡSR以降に絞った内容を考えていたものの、結局PC-8801全体の本になったのはこういった理由によるものである。
ただ、初代PC-8801が発売された当時はまだゲームマスコミもなく、流通もろくに整備もされておらず、ソフトメーカーといっても全国のショップがめいめいに雑誌広告を出して通信販売を行っていた時代。現在日本を代表する数々のトップメーカーすら、まだパソコンショップの片手間にソフトを作って売っていたのである。
そのような時代に発売されたゲームソフトだけに現物はおろか資料も乏しく、SR以前に発売されたタイトルについてはすべての実態を掴むことはできなかった。おそらく、掲載に漏れたタイトルもかなりの数にのぼるのではと推察できる。結果的に「パーフェクト」に程遠い出来になったが、それでもなお現時点で分かる範囲の本を作ることに価値があると捉え、不完全ながらもこのような形での刊行となった。
また、MSXおよびX68000同様、ホビーパソコン本来の楽しみであるツール類や草の根活動をはじめとしたクリエイティブワークスについては誌面の都合で紹介を見送った。
機会があればぜひそちらについてもまとめたいと考えるが、まず何よりPC-8801というホビーパソコンがあったことと、魅力的なタイトルが多数存在したゲームを紹介したいという思いで制作にあたった。当時を知らない世代の方には数々の名作ゲームのオリジンを知るためのテキストとして、当時に実際に遊んでいた世代の方には思い出の追体験のツールとして、各々のスタンスで楽しんで頂ければ幸いである。2022年5月 前田尋之