とんがりギャルゲー紀行 第104回:m[emu]~君を伝えて~

 いつもストーリーのネタバレを気にせずもりもり書いていますが、今回は特に多いので今更ですが注意してください。本日ご紹介するゲームは、ネクサスインターラクトがセガサターンとプレイステーション向けにリリースしたギャルゲー。

原画は日本アニメーションが担当

m[emu]~君を伝えて~

※今回の記事はセガサターン版の内容に基づいております。

 高校2年生の主人公がヒロインと愛を育む、というとよくある話のようですが、デートや日常会話だけでなく、交換日記でヒロインと交流を深めるシステムを採用している個性的なタイトルです。選択肢によって女の子側の反応が変わるだけでなく、主人公の性格を示す数値も変動するようになっており、どのタイプに偏るかによって各ヒロインの後半のストーリーが4パターンに分岐します。交換日記をする相手は始めにある心理テストで決定する1人だけなので、1プレイに付き1人しか攻略できません。

ドーピングでカンストできてしまいますが 、主人公の育成要素もあります。
主人公の性格は交換日記などの選択肢を経て変化していきます。
ヒロインは週2で2ページ日記を書く。主人公の返事は毎回1文のみ。

 交換日記というとささやかで甘酸っぱい交流に思えますが、このゲームはそんな生易しいものではございません。ヒロインとそこそこ仲良くなっていざエンディングへ向けてルート分岐した……と思ったら、たびたび超展開が待っている尖ったギャルゲーなのです。

武蔵野 香(右)

 例えばタイトル画面にもシルエットで登場している幼馴染ヒロイン・武蔵野 香(CV:坂本真綾)は、実を言うと本編の開始前から

死んでます。

 いやいやおいおいなーんじゃそりゃって話ですよね。でもね、そういうゲームなんです。ちなみに本編は10月~12月24日までで、ルート分岐は12月に入ってから。香の他のルートでは唐突に引っ越しが決まるなど幽霊のゆの字も出ない別物なのも関係あるのでしょうが、分岐前からの伏線なんてものはありません。というか分岐後も交換日記で「私のことを調べているでしょう」といきなり問い詰められて不穏な空気が流れだすので、やはり唐突な印象です。主人公が香を調べたり怪しむ描写もなくいきなりですからね。私も様々なエロゲーギャルゲーを遊んできたのでヒロインの死にはまあまあ慣れていますが(慣れとうなかった)、伏線もなくエンディング直前に実は前から死んでましたと明かされるのにはちょっと面食らいました。

 私が最初にプレイした時は高校1年生の高美ちゃんが交換日記のお相手でしたが、彼女の場合は12月に入ってから前触れなく家出したと日記に書いて寄越しました。そして、本編が終了する12月24日に呼び出してきたと思ったら、兄のように思っていた主人公を好きになったことに動揺して父親に相談したら交際を反対されて家出したけどもう和解して家に戻ったよと垂れ流し的に告白されるラストが待っていました。これからはなんの憂いもなく恋人でいられるよ、やったね! みたいな感じでお話としてはハッピーエンドでしたが、何もかも事後報告だわ恐らくは当事者である主人公も蚊帳の外だわでこちらの感情が追いつかず、「おお……。なんか知らんけど良かったじゃん」と思えたのはスタッフロールも終わりに近くなった頃のことでした。だっていきなり情報量多すぎるんだもの。

 というか高美ちゃんは交換日記の開始時点で主人公とお付き合いしていると作中で明記されていたのに、その後2ヵ月経ってから恋を自覚してすったもんだするのは変じゃなかろうか。ついでに捕捉しておくと、高美ちゃんの他ルートではそれぞれ彼女がアイドルになったり記憶喪失になったり他の男に取られそうになる展開が待っているので、家出ルートはパンチが弱い方です。

羽田みゆき

 ここまででも相当おかしな内容でしたが、作中で最もぶっ飛んでいるのは上画像の眼鏡っ娘。3年生の演劇部員・羽田みゆきです。この人の場合は、ルートによって実は宇宙人だと発覚します。比喩じゃなく。あと他に、インドに帰るルートがあります

 幽霊ヒロインや記憶喪失、アイドルデビューに宇宙人設定なんかは二次元の世界じゃ珍しくもありませんが、インドに帰るヒロインってのは私も初めてです。攻略情報を調べていて気になったので、スクリーンショットを用意してみました。このゲーム、どの選択肢で性格がどう変化するのかが非常に分かりづらいので狙ったルートに入るのが大変なんですよね。なので画面内のメーターを定規で測りつつロードしまくりましたよ。ドットを見比べる作業が目に辛かったので、狙い通りインドルートに入ったときは「やったぜインディア!」と内心でガッツポーズしてしまいました。

 といっても唐突に事実を突きつけてくる本作に深いストーリーなどないので、真相はあっさりしたものでした。彼女が日本にいるのは父親の仕事の都合であり、そもそも幼少期を過ごした故郷はインドなのだそうです。そして、同じく父親の仕事の都合でインドに帰ることになったと。

 テキストのインド推しがすごい。そういえば、ルート分岐で話の内容が大きく異なりますが、各ルートはパラレルワールド形式で分岐しているのでしょうか。それとも、インドルートでは明かさなかっただけで、羽田先輩の正体が宇宙人であることに変わりなかったりするのでしょうか。もし後者なら、彼女はインド出身の宇宙人ということになるのですが……。謎ですね。

 さて、『m~君を伝えて~』はいかがでしたでしょうか。全体的にラブ・ストーリーが突然過ぎて恋はあせらずにとお願いしたくなるタイトルですが、変なゲームだと知った上でプレイするにはなかなか楽しめるだと思いますよ。

 プレイ動画もいくつかネットに上がっていますが、突飛なルートに行き着いているものは見つからなかったので、気になったなら遊んでみるといいのではないでしょうか。ただ、ルートによってはヒロインを他の男に取られるので、苦手な方はその点だけご注意くださいね。

 おまけ。3人のヒロインを攻略したデータを持って初めからゲームを開始すると、隠しヒロインである女教師とも交換日記をできるようになります。これでも20代前半らしいのですが、ケバいですね……。

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