とんがりギャルゲー紀行 第115回:女装山脈

 さて、本日もとんがったゲームを紹介していきますよ。今回は女が登場しない美少女ゲームとして2011年度萌えゲーアワード話題賞の金賞を受賞したタイトルです。シリーズ最新作『女装神話』(の~すとらいく)が7月18日にsteamで先行発売されたので、シリーズの原点を取り上げることにいたしましたよ。本作は2011年6月発売なので、そろそろシリーズ10周年を迎えますね。

女装山脈

 山奥の村へ迷い込んだ主人公は、神の御使いとして村中から歓迎されて可愛い子たちに歓待を受けるが、少女の如き可憐さを持つ彼女たちの正体は男の娘だった――というストーリーのAVGです。「トンネルを抜けると、そこは女装の村だった!」というキャッチコピーがとってもスリリングで素敵だね。

 物語の舞台となる特に雪国ではない村では、訳あって男と女装した男の結婚が風習として根付いています。御使いと男の娘の間には子供も生まれると信じられており、主人公も奉仕されて子作りするというのが大まかな流れ。でも、男と男の娘の間に子供ができるわけ――

 あるんだな、これが。男と男の娘はエッチもできるし子供も作れるというのは、『女装~』シリーズで受け継がれる共通の世界観なのです。単なる迷信かと思いきや、本当にら~じなPONPONになるから驚かされるぜ。

 実を言うと、本作は紹介しようと思いながらたびたび見送っていた美少女ゲームだったりします。といってもネガティブな理由ではありませんよ。とんがりギャルゲー紀行を開始する前に「内容まで広く知られているタイトルを紹介するのは(目新しさがないから)避けよう」みたいな話があったり、「とんがりギャルゲー紀行なのにギャルがいないじゃんね」という考えから今まで紹介を見送っていたのですが、よく考えたら『THE地雷エロゲー』の本を作る際に他のスタッフが知らないと言っていた本作を自分が掲載タイトルとして推したのでしたし(地雷として扱っているわけではないです)、既に紹介した『乙女シリーズ 主人公ぱっち』という女装主人公が集うADVも野郎しかいないのだったわと思い直したのです。

 そういえばそもそも男の娘はコアなジャンルでしたね。よく攻略するからすっかり忘れていました。自分の中ではコアという認識がなくなっていたというか、どうも基準が曖昧になっているようなんです。以前『彼女を寝取ったヤリチン男を雌堕ちさせるまで』(メス男子)というガチムチヤンキーを攻略する18禁BLゲームをBLと気づかぬままプレイしたのですが、

  • 攻略対象が筋肉ムキムキ→なに、既に『Theガッツ』のタカさんで通った道よ。うん、イケるイケる!
  • 攻略対象にナニが生えている→これも『女装山脈』『女装海峡』『女装学園(孕)』『女装千年王国』で既に通った道よ。へへっ、何度も通りまくって獣道が整地されてら。うん、イケるイケる!
  • 攻略対象が筋肉ムキムキ+ナニが生えてる→その2つが組み合わさるのは珍しいな。でもメス堕ちするならメスでしょう。うん、イケるイケる!

 という不可思議な思考の下で普通に美少女ゲームのつもりで買って普通にクリアして数カ月経ってからやっと「いやホモゲーじゃねえか」と気づきました。メス堕ちするならメスってなんだよ。お前のストライクゾーンは海かよ、と。

 一応言っておくとBLに悪感情はありませんよ。『彼女を寝取った~』は物語のラストでタイトルを回収する流れに感心させられる、なかなか面白いゲームでした。ただ、ガチムチヤリチンヤンキー君を一風変わったヒロインと思い込んだまま数カ月も気づかなかった自分に衝撃を受けているだけです。メス男子がルネソフトのレーベルだから美少女ゲームという誤解を加速させたのかも。

 主人公の復讐の動機となった元カノが最後まで顔すら描かれないのをヒロイン単独に絞ったストイックな仕様だなとか思っていましたが、BLに女は不要というごく普通の気配りでした。この、「美少女ゲームとしては珍しい」と思っていた要素が「BLゲームとして考えれば普通」へとみるみる置き換わっていく感覚は、まるで推理小説の種明かしを読むかのような快感でした。そうか、これがどんでん返し……!

 男の娘はBLではなく美少女ゲームの一ジャンルであると理解してはいるものの、ガチムキヤンキーを数カ月ヒロインとして受容していたくらいに筆者の判断をガバガバにした原因のひとつは、間違いなく『女装山脈』に端を発する『女装』シリーズでしょうね。生えていたってヒロインだと思っても仕方がない。だってこのシリーズじゃ男の娘は妊娠するんですもの。『女装山脈』のヒロインはおちんちんランドに咲く三輪の花よ。

 と、おかしなことを言い出すアルピニスト(『女装山脈』のプレイヤーを指す言葉)もいますが、少しでも興味が出たら物見遊山感覚でプレイして見るのもいいのではないでしょうか。今年は新型コロナの影響で登山控えが広まっているので、自宅で安全な『女装山脈』にのぼらんか、ということでおすすめ。ついでに異世界ファンタジーものである『女装千年王国』も個人的に大好きなので推しておきます。

 さて、それでは今回はこの辺で。また次回もよろしくお願いします。

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