今年ももう12月に入って、いよいよあの日が近づいて来ましたね。これを題材にした作品も数多いあの日ですよ。
そう、赤穂事件の日です。
12月14日は赤穂浪士の討ち入り事件が起きた日です。『仮名手本忠臣蔵』の基になった事件ですね。
色々あって浅野内匠頭と吉良上野介の間の遺恨が深まり、結果として松之大廊下で浅野内匠頭が背後から吉良上野介に斬りかかったというのが大まかな内容です。その後、浅野内匠頭は切腹を命じられ、吉良上野介はお咎めなしに終わりました。赤穂藩は取り潰しとなって城も空け、元家臣たちは浅野家再興を目指す上方の主流派と吉良上野介への仇討ちを望む江戸急進派に分かれて対立して云々……と、この辺りの経緯を知らない方はwikiや他文献を見るか、今回紹介するゲームをプレイしてください。
というわけで忠臣蔵を題材にした美少女ゲームを紹介していきますよ。
ChuSinGura46+1 -忠臣蔵46+1-
inre(インレ)が2013年に発売したタイトルです。元は同人サークルのれいんどっぐが販売していた3タイトルをまとめて追加ストーリーとボイスを付けたものですね。元からして1作品ではないため、インストールしたゲームフォルダの容量が7GBを超える大作となっております。
内容はタイムスリップ+歴史モノ。現代からタイムスリップした少年・直刃が300年前の赤穂藩に存在した自分そっくりな少年となり、紆余曲折あって大石内蔵助率いる赤穂浪士たちと共に討ち入りに参加するストーリーです。
本編は以下のとおり、複数のエピソードで構成されています。
- 假名手本忠臣蔵編
- 江戸急進派編
- 百花魁編
- 仇華・宿怨編
- 刃・忠勇義烈編
後に理由は明らかになりますが、討ち入りの最中や後の辺りで主人公は何故か幾度も時を遡ってしまいます。その度にちょっとした行動の違いから人間関係や置かれる立場も変化するので、例えば最初の【假名手本忠臣蔵編】ではお家再興を目指す主流派の筆頭・大石内蔵助に気に入られて傍につくことになり、その次の【江戸急進派編】ではその名の通り堀部安兵衛ら江戸急進派の面々と江戸で合流することになったりします。
つまりこの作品はタイムスリップという設定を活かして、主人公1人の視点で複数の角度から『忠臣蔵』の物語を描いているんですね。異なる立場に置かれた登場人物たちの想いや取り巻く環境など、この設定でなければ描ききれなかったであろう物語がこれでもかと盛り込まれているのです。吉良側の人物も物語上重要な立ち位置にいて吉良側から見る赤穂事件の話もあったりと、『忠臣蔵』を単に忠義の美談とだけ捉えているわけではないのも特徴的。
『忠臣蔵』の登場人物たちを美少女化しているためにイロモノっぽく映るかもしれませんが、なかなかどうしてしっかり歴史モノをやっていますよ。オリジナル要素も色々と入っていますけど。登場人物は多いですが、プレイ中に人物設定を確認する機能があるので「こいつ誰だっけ?」となっても安心ですし、とっつきやすいゲームだと思います。作中に1つしか選択肢がないので、ゲームというより豪華な読み物といった側面が強いですが。
それにしても、各エピソードのオープニングムービーが用意されているのはともかく、討ち入りシーンの回想があるのはこの作品くらいじゃなかろうか。どんだけ戦闘シーンにこだわっているのかというと、低スペックPC用に戦闘演出軽減パッチが用意されるほどです。とんでもねえな。
歴史モノとしてだけでなく、基本はコミカルに、そして締めるところはシリアスに締めるストーリーも魅力的ですね。日常ではコメディっぽいシーンは多いものの、時間を何度も巻き戻るせいで主人公が好きあった相手に想いを忘れられる、関係をリセットされる哀しみなども描かれます。最初の假名手本忠臣蔵編で主人公が大石内蔵助から教わった「巻き上げ」の技を、教えてくれた本人が忘れた後でも頼りにし続ける描写が個人的にはお気に入りだったりして。
まだまだ女体化モノに忌避感のある方はいらっしゃるようですが、実によく練り込まれた作品なので、お嫌でなければ一度試しに遊んでみて欲しいですね。どうやらsteamで【假名手本忠臣蔵編】(たぶん全年齢版)を無料でゲットできるようなので、ご興味があればどうぞ。萌えもありつつ、燃えにも重点を置いた濃厚なお話が楽しめますよ。このコーナーでは毎度のように紹介作品をおすすめしていますが、このタイトルは個人的には特にお気に入りであることをお伝えしておきます。
使用楽曲もかなりの名曲なのでぜひ一度聴いてみてください。