とんがりギャルゲー紀行 第18回:ダブルキャスト

本日紹介するのは『ダブルキャスト』
初代プレイステーション時代にソニーが生み出した作品です。
「見るドラマからやるドラマへ」というコンセプトのやるドラシリーズの第一作。大人気アニメ『機動戦艦ナデシコ』を手掛けた後藤圭二がキャラクターデザインを務めており、やるドラマというコンセプト通りのフルアニメーション&フルボイスであることもあって発売前から注目度は高かったようです。アニメーション制作はProduction I.G。

『ダブルキャスト』から始まった初代プレイステーションにおけるやるドラシリーズ4作品では、大学生の主人公と記憶喪失のヒロインのラブストーリーが描かれます。
なんでも元々は四季折々の4つの話をまとめた1作品にするはずが、想定よりもボリュームが増して個別でリリースすることになってしまったとか。
『ダブルキャスト』以外のやるドラシリーズ作品でも『雪割りの花』など良作もリリースされたのですが、『ダブルキャスト』が濃すぎるせいかその後のシリーズ作品の知名度はいまひとつのようですね。プレステで4作品をリリースしたあともハードを変えてシリーズは継続していたのですが、初代が鮮烈すぎたのでしょう。

『ダブルキャスト』のどの辺りが濃いのかというと、グロテスクな描写があるところですね。アイキャッチ画像がアレだったのに今更ですが、バイオレンスな描写が苦手な人はご注意下さい。

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ヒロインである赤坂美月は多重人格(現在は解離性同一性障害と表現するそうですが)。明るく人懐っこい性格の少女ですが、その内に殺人も厭わない狂暴な人格が眠っています。タイトルの『ダブルキャスト』は複数の人格を持っている彼女の性質を表現したものですね。リアルに病んでいるのはヤンデレとは違うなにかのような気がしますが、なんと表現していいのやら。
主人公とは飲み会で酔いつぶれたところを美月と名乗る少女が助けてくれたのをきっかけに知り合い、記憶喪失だという彼女を自宅に招き同居生活を始めます。その後で起きる悲劇がウソであるかのような甘酸っぱい空気が流れますが、主人公が取る行動によってはヒロインに不安を与えて暴走を招くことになってしまいます。

ハッピーエンドを迎えるためには悲劇から主人公が成すべきことを学んで物語を繰り返し、ループによって少しずつ増えていく選択肢から正解を選び取らねばなりません。
ちなみに、上でループと表現しましたが本作はループものではないです。ゲームの仕掛け的にプレイヤーが物語を繰り返しプレイして平和的解決の糸口を探るというもので、主人公の記憶がループしているわけではないです。

グロテスクな表現だとかバッドエンドの悲惨さの印象が先行している本作ですが、お話自体も大変面白いですよ。主人公の些細な行動・言動の違いが周囲に影響を及ぼして、ちょっとしたシーンが変化していくのがいいですね。あとヒロインがカワイイ。

それと、お色気描写に力が入っているのも特徴です。この作品の登場以前はプレイステーションの販売元であるソニーがバリバリに規制を入れていて、初代プレイステーションのソフトでは女の子のパンツが映らないように配慮されていました。同時期の他ハードよりも規制が厳しく、セガサターン版とプレステ版の両方をリリースしているゲームではプレステ版のほうがお色気描写が控えめになることも……。『美少女花札紀行 みちのく秘湯恋物語』もそれに当てはまりますね。

ですが、そんなプレステ界の委員長的に「ハレンチ禁止」を訴えていたソニー自身が『ダブルキャスト』でヒロインのパンチラを出してしまったことで、ソフトメーカーから「なんだよ、天下のソニーがパンツ出したんだからこっちも出していいじゃないか」みたいな声が上がってきたそうで……。
かくしてプレイステーションでの規制が緩和され、以降の作品ではパンチラ解禁となりました。つまり、プレステのゲームで女の子のパンツを拝めるのは『ダブルキャスト』のおかげなのです。プレステのゲームでパンチラに喜んだ記憶のある紳士の皆さんは、赤坂さんちのお嬢さんに感謝すべきなのかもしれません。

問題(?)のパンチラシーン。ちなみにゲームの本編では、この画像のようにアニメ画面の下にセリフが表示されます。アニメーションに文字が入りこまないのがいいですね。

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