第2回:『スプラぴゅうン』の巻

箱絵2

ぴゅう太買われましたか?

皆様、ぴゅう太はお買い上げなされましたか? ん? 今回はトミーより発売されておりましたぴゅう太用カセットテープソフトとその素晴らしさの一端のご紹介と、そしてそれらから自分が受けた影響がどのようなものであったかを混ぜながらぴゅう太買えやソフトの箱絵と第二弾「スプラぴゅうン」について作文させて頂きたく存じます。何卒、宜しくお願い致します。

ぴゅう太の市販ソフトについて

ぴゅう太には国内26本に海外のみ販売1本を含め、計27本のカートリッジソフトが発売されておりました。また玩具販売店でのデモ用カートリッジが3本あったとのことです。とのことです、と申しますのは自分がこの目で確認しているのが2本しかないからです。ぜひあと1本もみてみたいと希望、いや切望、いやいや熱望しております。

いじわるハンマー

いじわるハンマー

富士山と新幹線(これはゲームではありません)

富士山と新幹線(これはゲームではありません)

デモカートリッジは別として、ぴゅう太のカートリッジソフトは一律4800円にて販売されておりました。どれも楽しいゲームばかりですが、子どもの懐具合にはなかなか厳しい価格ではございます。そんな理由もあったのかもしれません。日本語G-BASICにて作成され、テープを媒体として1000円で販売されたテープソフトシリーズがございました。それは実に目立たず、ひっそりとではありますが、しかしたしかに存在していたのです。

説明書1

説明書1

ぴゅう太用テープソフトとは

テープソフトのシリーズは前期と後期のものがあり、合わせて20種類くらい発売されていたはずでございます。前期のものは全て初代ぴゅう太用であり、A面とB面にそれぞれ違うゲーム、つまり2本のゲームが1本のテープに収録されております。箱絵はぴゅう太のイメージカラーともいえる青と白の市松模様で統一されていて、なんとなく当時のパソコンメーカーの自社開発自社販売のソフトを意識しているようにも思える、いかにもコンピュータソフトらしいものとなっております。後期のものはA面に初代ぴゅう太mk2用、B面にぴゅう太用の同じゲームが、すなわち1本のテープに1本のゲームが収録されております。箱絵はぴゅう太のジョイコントローラを握った女の子が男の子に涙を流させるという、実に愛らしい絵が描かれております。

ムーンランディング1

ムーンランディング1

ムーンランディング2

ムーンランディング2

前期に収録されたゲームは自分が知る限り、そのどれもが手作り感満載であり、またゲームだけでなく教育用ソフトや環境ソフトも含まれています。特に先日、poipoiさんが入手と読み出しを成功させ、念願かなって遊ぶことができた「算数教室」や「ラクガキボード」は実地の教育現場にて、教科指導教育用とコンピュータ教育用として十分に役立つのではないかと思えるほどよく出来ておりました。さらに日本語G-BASICにおけるプログラムテクニックやG-GRAPHICとの連携の見本としても大変に素晴らしいものです。日本語G-BASICではキーボードからの入力がサポートされておらず(ジョイコントローラに対応しているキーは別)、全ての入力はジョイコントローラからとなります。つまり数値や言葉の入力が不可なのですが、ジョイコントローラからの入力方法の工夫をもって「算数教室」ではその点を見事に解決しています。

説明書2

説明書2

後期のソフトにつきましては、プログラムテクニックやグラフィックにおいて実に熟成された趣が感じられます。そのうちのひとつ「ムーンランディング」はアーケードゲーム「ルナーランダー」を簡素にアレンジしたゲームですが、日本語G-BASICでは不可能ではないかとさえ思えた自機と複雑な地形との当たり判定を、グラフィック画面とプログラム、そしてその連携の両方に大変な工夫を重ね、アニメとセル内容の比較を用いて実現なされています。

「ムーンランディング」を参考に

さて、その「ムーンランディング」の地形判定方法をリストから読み解くために。ぶきっちょかつ面倒くさがりの自分に代わって。poipoiさんが2行しか表示されないリスト画面を少しずつ写真に撮ってつないでくださいました。おかげでグラフィック画面での工夫とプログラム上での工夫を読み解くことができ、それに自分なりの工夫を加えれば、これが可能なら「パックマン」のようなドットイートタイプのゲームも作れるな、よし二作目はそれにしてみよう、と考えました。

スプラぴゅうンのロゴ

スプラぴゅうンのロゴ

そう考えたとき、自分の手にはWiiUのコントローラパッドが握られておりました。任天堂の「スプラトゥーン」を遊んでいたのです。「ローラーで塗りまくるの楽しすぎ、あ、この面白さ、ぴゅう太でぜひ再現したい」と身の程をわきまえぬことを思いつきました。床に色を塗っていく、これもまたドットイートタイプのゲームになるであろうというか、つまり「クラッシュローラー」でございますね。

ぷしゃああ

主人公はやはりイカにしよう。対戦はメモリ上限にひっかかるだろうから厳しい。主人公が迷路の床に色を塗って点数をとっていくようにしよう。まさにドットイート、「クラッシュローラー」。敵を出場させるのもやっぱりメモリ上限がきつい。遊ぶごとに迷路を変化させたいけどいい方法を思いつかない。ならば最初に出来る限り迷路を練りこんで作成し、その迷路において遊び手がどのように効率よく色を塗っていくか、時間内にどれだけ床を塗れるかを詰めていけるようにすればいい。これなら処理を少なくできるし、繰り返し遊ぶ楽しさも生まれるはず。あと「スプラトゥーン」で楽しかったのは武器ごとに違う塗り方やボムの存在。あれにせめて少しでも近い楽しさを付け加えたい。疲れたからちょっとAVみよう。ああ潮を吹かせているな。ベッドも床もべしゃべしゃ。あれ、吹くことそのものは別に気持ちよくないってみんないうね。実際気持ちいいのはその前のGスポッ・・・あ、これだ。Gスポッもといシュートボタンを押したら周囲の床に色をぷしゃああっと吹きだすようにして、これを必殺技としよう。直線で塗ったほうがよいであろう箇所と、ぷしゃああっと吹いたほうがよいであろう箇所を迷路に作っておいて、その試行錯誤を遊び手に投げかけよう。シュートボタンなら人ごとによって探り当てる必要もないし、いいんじゃないかしら。シュートボタンと同じでだいたい上側のこのあたりのような感じだし。

スプラぴゅうン1

スプラぴゅうン1

ゲームのルールが決まってみると。最も難しかったのは遊んで楽しさを感じてもらえる迷路作りでした。直線で一気に塗れる楽しさ。細かな動きをするか、あるいはいっそ壁向こうも必殺技でまとめて塗ってしまうかを考える楽しさ。そしてどこからどのように塗っていけば効率よく点数を稼げるかを考える楽しさ。これらを迷路に内包させなければなりません。またぴゅう太の日本語G-BASICはいったんプログラミングを始めてしまうと、ほとんどの場合においてグラフィック画面に手を入れることができなくなってしまいます。もちろんどうしても必要とあれば手直し可能ではありますが、それまでのプログラムを一から入力し直しになるのです。頭の中で主人公の動きを試しながら、G-GRAPHICで迷路をしこしこと作成致しました。

画面初期化の悩みどころ

スプラぴゅうン2

スプラぴゅうン2

「スプラぴゅうン」ではもうひとつ、非常に悩んだ点がございます。それはゲームスタート時の画面初期化における待ち時間です。この段落の前と後の写真はゲームスタート時、迷路内の塗りあとを黒く初期化をする様子なのですが、やむを得ないとはいえ、こればかりは避けようもなく。以後のぴゅう太買えやソフトでは開き直り、割り切っておりますが、このときは本当に悩みました。

スプラぴゅうン3

スプラぴゅうン3

そして箱絵へ

「スプラトゥーン」や「クラッシュローラー」といった偉大なるお手本と、poipoiさんの助けのおかげをもちまして、なんとかこれなら楽しんでもらえるかもと思える「スプラぴゅうン」が完成致しました。このあたりから、テープ媒体にて皆さんにお渡しできれば、ぴゅう太買えやソフトという名でシリーズとしてゲームを続けて作っていければ、と考え始めました。そのためにはテープの箱絵も必要になるなと考え、poipoiさんに相談をもちかけました。ゲームのお祭りなどで出店させて頂いているぴゅう太買えや組における本の可愛らしいイラストは、poipoiさんの奥様に描いて頂いているからです。

イカだっつってんだろおい

イカ

イカ

「できれば昔のマイコン用テープソフトのあの感じ。ぜんぜんソフトの内容がつかめないような絵もあったり、妙にサイバーさだけが目立ったりする絵もあったり、あの不思議さと未来感覚が同居したような、いわばでたらめな感じの箱絵がいいんだけども」とかなり無茶な要求をした覚えがあります。この無茶はさすがに奥様には要求できないとpoipoiさんは考えたのでありましょう。ゲームを遊び、自分の書いた説明書を読んで、poipoiさんご自身が描きあげた箱絵は。説明書でイカだとはっきり書いているにも関わらず、タコが迷路でスミを吹いている絵でした。内心、「こここ、これだ!! これこそ求めてた箱絵だ!!」と思いましたが。poipoiさんに「イカだっつってんだろこらなめてんのか、マンメンミ言わすぞ」と申し上げてみたところ「うっせえタコにしかみえねえんだばかやろ、チェイスボムラッシュでサーバ落とされっぞ」とのお返事でした。以後、奥様も箱絵にご協力頂いておりますが、お二人が手がけられるあの箱絵あってこその、ぴゅう太買えやソフトなのです。

箱絵1

箱絵1

あの優しさと楽しさを少しでも自分の手で再現できたら

かつて、マイコンという言葉もテープ媒体のソフトも市場からほぼ消えかけていたころ。ぴゅう太においてたしかにテープソフトが発売されておりました。カタログに掲載されていたタイトルが果たして全て発売されたかどうかも定かではないほど、店頭ではほとんどみかけることはありませんでした。しかしそれらには、カートリッジソフトと同じく、いやそれ以上に。トミーのおじちゃんおばちゃん方の子どもたちへの優しさが、手作りの楽しさが、溢れんばかりに込められておりました。ぴゅう太買えやソフトがその足元に、ほんのかすかにでも及ぶとすれば、それはpoipoiさんと奥様のご協力や楽しく遊んでくださる皆様あってこそであり。あのテープソフトに詰め込まれた優しさと手作りの楽しさの再現を為すため、今後もぴゅう太買えやソフトを作り続けていければと思う次第です。お読み頂きありがとうございました。次回もまたお目通し願えれば幸いです。失礼致します。

 

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