とんがりギャルゲー紀行 第65回:日英対訳デストピア

さて、本日もとんがったゲームを紹介していきますよ。今回紹介するのは、

『日英対訳デストピア』

日本語と英語の両言語に対応した物語を読みながら、英語を勉強しよう! という斬新な発想から生まれた1作。

ざっくりストーリーを説明しますと、“復讐のために学園に教師として潜入した男が、標的の女生徒(と、その関係者の女)に薬と催眠術を併用した調教を強要し、最終的に性奴隷として裏社会で金になるように仕上げる”という感じです。標的は4人おり、うち3人をどの順番で堕としていくかでシナリオが変化します。

処女は主人公が奪って後の調教は他の男に任せてしまう流れなので、独占好きな人は注意です。

ちなみにこれ、超空間ゲーです。

わかる人にはこの一言で本作がどういう内容かが伝わるのですが、超空間を知らない方のために簡単に説明しますね。このゲームを出したVEGAというブランドは、

  • 『やきにくくりぷうぴ』(おバカでスケベな焼肉店店長が焼き肉のタレに女の愛液を使おうとしたりするゲーム。やばい)
  • 『お兄ちゃん受信中』(電波を受信するようになったお兄ちゃんが少女のケツに懐中電灯を刺して蛍の気持ちを体験させたりするゲーム。やばい)
  • 『奴隷(おべい)』(他のゲームと同じCGを色だけ変えて使いまわしたゲーム。エコ)

といった奇ゲーの数々を生み出したブランド群のひとつなんです。これらの制作元は同じで、ブランド群のひとつであるハイパースペースの名をもじって「超空間」と呼ばれています(知らない方もいると思うので超空間ゲーを扱うたびにこの説明を入れていますが、くどかったらごめんなさい)。ピンとこない方は「低予算低クオリティだけどエキセントリックなのが超空間」と思っておいてください。

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さて、『日英対訳デストピア』の説明に戻りますね。本作は元々『デストピア』というタイトルで2001年にリリースされていたので、本作はオリジナルではなく、既出の作品に英語テキストを追加されたものです(『日英対訳デストピア』の発売は2004年)。テキストウインドウの上で右クリックすると【日本語⇔英語】が切り替わるようになっており、日本語だけで楽しむこともできますよ。

とはいえ、その容量は極端に少なく、私のパソコンではなんと2秒でインストールが終わるほどでした。ゲーム画面が小さいからなのか、CGや立ち絵の差分がろくにないからなのか、追加要素が入っているのに驚くほど低容量ですね。ゲームフォルダを見たら63.6MBしかありませんでした。

ちなみにボイスは日本語のみ(ボイス自体も主要ヒロインのものしかない)なので、リスニングの勉強はできません。というか上の画像を見たらわかると思いますが、英文が日本人特有の変な英語というか教科書的というか、直訳に近いのかな。なんといえばいいのでしょう。私は英語が得意ではないのですが、ほぼ間違いなく英語の勉強にならないのはわかります。常に間違っているわけではないけど、「イキたい」が“I want to go”と訳されていたりしてかなりおかしい部分がちらほら……。

ついでにゲーム自体も正直面白くはないです。じゃあなぜ今回取り上げたのかというと、

本作のダークな雰囲気と変な英文のミスマッチが面白いからなのです。

下衆な男キャラの「へへへ」や「へっへっへ」という暗い笑いをまとめて“Ha! Ha! Ha! ”と訳しているせいでやたらと陽気に見えちゃったりとか。あとは喘ぎ声も訳にかなり問題があって、

「いいの」“That’s so good.”と訳していたりするんですよね。女が催眠をかけられて訳も分からず感じさせられるシーンなのに「ザッツソーグッド」ですよ。 しっとり囁くセリフとしてこの言葉の選択はどうなのか。そして洋物のガッカリボイスで有名な「オーイエス!」発言も飛び出しています。 情緒をフルスイングでぶっ飛ばしていますね。「をかし」じゃなくて「あなや」な感じ。もしかするとわざと笑わせにきているのかもしれませんね。喘ぎ声は大体こんな感じで、日本語では多彩な言葉を使っているのに大体“Ah!”に訳しちゃう投げやり感が面白いです。

他にも例を挙げますと、

大きな胸がぷるん、と揺れた。Her large breasts bounce up and down.

もうなんていうか、文章が固い! ねっとりしっとりした空気が英文からまったく伝わってこない!

日本語表現の幅広さを改めて認識させられますね。翻訳家って大変な仕事なんだなあ、としみじみ思いました。

あ、もちろん英語を下に見たり否定する気はまったくないということは念のため言っておきますね。どう考えても訳の内容に問題があるだけなので。

問題があるのは英訳だけじゃないですけどね! なぜかスクリプトが表示されてしまって英文が表示すらされないシーンもありますから。


さらにエピソード分岐条件のト書きまで表示されちゃいます(英語表示にしてテキストを巻き戻しすると出る)。いいんですかね、これ。

とまあ、『日英対訳デストピア』はなかなかすごい作品です。あまり趣味のいい楽しみ方ではありませんが、結構笑わせてもらいました。一応、グラフィックは悪くないですし、上の画像にいる女教師や学園に潜入している協力者の女性など可愛いキャラクターもいるので、ハードすぎる内容でもいいという方ならそれなりに楽しめると思います。

主人公の協力者。普段は右の姿で学園に潜入し、標的の女をおびき寄せるきっかけを作らせている。善性を捨てきれない女スパイという美味しい役どころ。なぜかボイスがない。

ついでに言うなら、ちょっとだけオノマトペの勉強にはなる……かも? しかしながらやっぱり英語の勉強にはならないと思います。

※2月18日追記

あとこれ書き忘れていたのですが、『やきにくくりぷうぴ』に続いて本作でもゲームの起動アイコンにゲームと関係ない画像がまた使われていましたので報告しておきますね。

▲これです


だから誰だよお前――!!

なぜ豚……?

以上、追記終わり。

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