第9回:X1Gを求め、雪の秋葉原を彷徨う

友達の家でフロッピーディスクの利便性に触れ、小学生時代から使っていたカセットテープに限界を感じていた私は、1987年春、中学を卒業すると同時に3年余りにわたって連れ添った愛機、初代X1を後輩に譲って新機種を導入する決断を下します。原資は、初代X1の売却代金+貯金の16万円。

機種はX1Gのモデル30(5インチフロッピーディスクドライブ2台内蔵)を選択しました。

X1Gはその時点ですでに最新機種ではありませんでしたが、その分型落ち価格で買うことができ、「フロッピーディスクが使いたい」という私の要件を十分満たすことができたのです。

当時はそれほどX1turboシリーズ専用ソフトもない(この頃はturbo用と表記されていても、実質的に「5インチフロッピーディスク版」程度の意味合いでしかなかった)上に、それほどX1turboに対する憧れもなく、かつturbo自体が高価だったため「どうせ手に届かない価格帯なら、X68000もX1turboも同じじゃん」くらいの感覚でした。

その代わりにといってはなんですが、絶対外せなかったオプションが「ステレオタイプFM音源ボード」です。

X1ユーザーのマスト周辺機器、FM音源ボード

X1シリーズは内蔵音源として元々PSG(俗にいうピコピコ音)が3チャンネル使用できたのですが、1985年に発売されたPC-8801mkⅡSRに搭載されたFM音源がきっかけで、音楽に対する表現力が俄然注目され始めた時代でした。アーケードゲームの世界でも『マーブルマッドネス』(1985年)、『沙羅曼蛇』『イシターの復活』『ファンタジーゾーン』(1986年)など、続々とFM音源が採用され始め、音源強化の波に乗り遅れたX1ユーザーは肩身の狭い思いをしていたのです。

そこでシャープがX1シリーズ用に発売した音源強化オプションが「ステレオタイプFM音源ボード」でした。これは前出のアーケードゲームでも搭載されたヤマハのYM2151というチップを採用し、ステレオ8チャンネルの再生が可能。いうなれば「使いこなせばアーケードゲームと全く同じ音をX1でも鳴らすことが可能」という、アーケード至上主義者だった私には強烈に魅力的な製品でした。

しかも、X68000でも同じFM音源が搭載されており、その他の機能でははるかに及ばないにせよ、音周りだけでもX68000の水準に引き上げることができるという点も、私の購入意欲を後押ししていた点も見逃せません。

実際、本製品を購入したときの衝撃はすさまじく、同時期に購入した『うっでぃぽこ』のタイトル画面や、『夢幻戦士ヴァリス』のミュージックモードなどを延々とBGM代わりに流していた時期があったほどです。

X1Gを求め、雪の秋葉原を彷徨う

「パソコンを買うなら秋葉原!」という条件反射的な発想で、喜び勇んでX1Gを買いに行ったのは1987年3月のある日でした。すでに受験も終え、学校も実質的に授業はなかったため、少しでも早くと平日の朝から秋葉原の地を踏むことになります。理由は、丸1日使って店舗回りをして少しでも安い店を探すためでした。その日は不運にも寒気のために雪が降っており、足元が悪い上に極寒の中での探索となったのを覚えています。

この頃はすでにX1turboⅢとX1turboZが発売されており、狙っていたX1Gモデル30はなかなか見つかりません。データレコーダー搭載のモデル10は在庫があったのですが、そもそもフロッピーディスクを使いたいという目的が大前提だったため、これには一切歯牙にかけません。ようやく何店舗か回ったところで、石丸電気(何号店だったか失念。現ムーランがある場所)で在庫を見つけました。

X1Gにはオフィスグレーとブラックの2色バリエーションがあったのですが、ブラックはあいにく取り寄せになるとのこと。1日も早く使いたかった私は、やむをえずオフィスグレーを選択します。

持ち帰りか配送かと聞かれましたが、当然ながら(?)雪であったにもかかわらず即日持ち帰りを選択。厳重に梱包された本体とモニターの2箱を、荷物持ちでついてきてくれた友達と、苦労しながら持ち帰ったのでした。

こうして、見事モデルチェンジと相成った我が家のX1、以後ターボに乗り換えることなくX68000を購入するまで本機種で突っ走ることになります。

 

当記事に関連する商品紹介

ABOUTこの記事をかいた人

1972年愛媛県松山市生まれ。アーケード、家庭用、PCはもとより美少女ゲームまで何でも遊ぶ、ストライクゾーンの広い古参ゲーマー。ただし、下手の横好きがたたり、実力でクリアできたゲームの数は決して多くないのが弱点。