前回からだいぶ間が空いてしまいました。今回は『NEW FM音源ドライバー』が登場するのかと思いきや、『VIP』で悪戦苦闘する話です。当時、FM音源ボードを手にしていたX1ユーザーならあるあるかもしれませんが、他機種のユーザー放ったらかし。できるだけわかるように書いては見ましたが、もし伝わらないようであればごめんなさい!
『VIP』を使って楽譜を打ち込んでみよう
「せっかくのFM音源を手にしたわけだから、自分でもいろいろ曲を作ってみよう」というわけで、前回でも触れましたが、購入してから1年位の間は付属の付属のミュージックツール『VIP』を使っておりました。とはいえ、大抵は『オールアバウトナムコ』やベーマガに毎月掲載されていた楽譜、ゲームのサントラCDに付いていた楽譜を打ち込むパターンが大半で、いざ演奏させてみるとオリジナルとは似ても似つかないヘッポコなシロモノばかりでした。
大抵は自分の楽譜入力ミスだったりするわけですが、中には掲載されていた楽譜に採譜ミスがあったケース(当時は楽譜にミスがあるなど疑いもしていなかった!)もあったりと、学校の音楽の授業で習った程度の知識しかなかった私には悪戦苦闘の連続。そもそも、楽譜の入力はどうにかできたところで、FM音源最大のハードルである音色作りは付け焼き刃でどうにかなるものでもなく、ベーマガに掲載されたYK-2先生やYu-You先生の連載を読みながら理論的裏付けもなくデフォルト音色のパラメータをいじるのが精一杯だったのです。
それでも『VIP』の音色エディタ「NEWTONE」の出来はよく、ある程度音色づくりのコツを掴んだ後になっても大変重宝しました。
『VIP』の不満点
『VIP』自体は当時の水準を考えれば十分に良くできたツールだったのですが、さすがに1年も使っているといろいろ不満点も出てきます。具体的には以下の3点でした。
- ステレオデチューンができない
- 強制的にリズムパートに3チャンネル奪われてしまう
- メモリが少ない
①番は「周波数ずらし」などとも呼ばれ『ドラゴンスピリット』などで使われていたテクニックですが、左右のチャンネルに微妙に周波数の異なる音を重ねることで「音の厚み」を感じさせるものです。1つのパートに2つのチャンネルを割り当てなければならないため“ここぞ”(大抵はメロディパート)という箇所にしか使えませんが、効果は絶大でした。
②番は、入力を簡略化して使いやすくするための配慮だったのでしょうが、正直言って8チャンネルのうち3チャンネルを強制的にパーカッションに割り振るのは多すぎではと思います。特に自分が打ち込んでいたものが大抵ゲームミュージックな上に、オリジナルのゲームミュージックにパーカッションを3チャンネルも使った贅沢なものなど殆どなかったため、本当に余計なお世話でした。
③番が私にとって一番致命的でして、『VIP』のフリーエリアは23KB。「After Burbner」や「Daddy Mulk」あたりだと収まりきらないんですよ。当時、無理矢理チャンネルを削るなりしてようやく詰め込みましたが、せっかくのYM2151を触っているのにメモリの都合で諦めざるをえなかったのはとにかく歯がゆかったものです。
今から考えれば当たり前の話なのですが、ツールやメモリのことは考えもせずに「同じYM2151を積んでいる以上、アーケードとまったく同じ音が出せる。出せないのは自分のスキル不足」と日々自分を責めて悶々としていたものでした。まあ、スペックのせいにせずに試行錯誤でどうにかしてみようという時間があったことは、自身のスキル向上の役に立ったわけで決して無駄ではなかったんですけどね。
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