とんがりギャルゲー紀行 第13回:ルームメイト~井上涼子~

さて、今回紹介するのはセガサターンの『ルームメイト~井上涼子~』。井上涼子三部作の一作目です。
ゲームを繰り返し起動して、同居人である井上涼子と交流を深めていくギャルゲーです。主人公は社会人で涼子は高校生。年頃で等身大の女の子である涼子とのちょっとした会話を楽しめます。会話中に選択肢も出ますが攻略には影響せず、ヒロインの気に入る選択肢を選ぶ形式のよくあるギャルゲーとは一線を画す作品でした。

セガサターンの時計機能を活用したリアルタイム反映イベントがゲームの目玉になっていまして、これが当時は斬新でした(プレイステーション版はポケットステーションの時計に対応)。日付も反映されるのでクリスマスや正月などのイベントをヒロインと一緒に過ごせます。比較的新しい作品でいうと『ラブプラス』シリーズでも採用されているシステムです。が、本作が発売された1997年にはまだ珍しいものでした。

本作を発売したのはデータム・ポリスター。レコード会社のゲームミュージック部門が独立した会社です。『ルームメイト』の人気によって躍進し、のちに同シリーズをリリース。同様のシステムを用いた『ぽけかの』を生み出したのもこの会社です。

良作と言われる本作ですが、新しい試みで不慣れなプログラムを組んだためかバグを取り切れていないという問題もあったり。確か同居中に年をまたぐとバッドエンドになってしまうはずですので、涼子とクリスマスと正月の両方を過ごしたいと思って日付を設定すると年明けに悲劇が訪れます。

バッドエンドは涼子が主人公の家を出て行ってしまうというもの。設定はちょっとシビアで、バグが発生しなくても彼女をあまり構わずにいるとすぐにいなくなってしまいます。

以前この作品の記事を書く機会がありまして、その際に家族に『ルームメイト~井上涼子~』というゲームを知っているかと聞いたらこんな答えが返ってきました。

「ああ、あの空っぽの部屋を眺めるヤツ」と。

空っぽの部屋を眺めるヤツ

空っぽの部屋を眺めるヤツ……?

涼子に捨てられてるー!?

一応言っておきますけど、『ルームメイト~井上涼子~』にはちゃんとエンディングがありますからね。
ちなみに家族にもそう言ったら、「へえ、あのゲームってエンディングあるんだ」と言われました。そりゃありますとも。
ゲームをマメに起動していたらいきなり空っぽの部屋を眺めることにはなりませんから。
ネタバレしちゃうと涼子は確かに最終的には家を出ちゃうんですけども。やっぱり空っぽの部屋になるんじゃねえかというツッコミは置いておいてください。エンディングを迎えると、涼子が突然消えてしまうのではなく、彼女と絆を育んだうえで旅立ちを見送ることになります。

いよいよお別れというときに不意打ちのキス。この時の写真がいつのまにか主人公の机の引き出しに入れらていたことが後日判明します。キスした直後に海外へ旅立ったのに、いつの間に写真を仕込んだやら。キス顔の写真だけ先に撮って仕掛けておいたのかもしれません。用意周到なことです。

空っぽの部屋を眺めることにならずにきちんとエンディングを迎えるコツは、マメにゲームを起動することです。面倒なら本体の設定をいじって時間をちまちま進めてしまえばいいので、忙しい人でも安心。ストーリーの進行に必要なイベントと日常会話イベントがあるので、前者はなるべく逃さず時を進めていかなくてはなりません。
マメに起動していれば、涼子のお風呂シーンを覗くチャンスも……。当時はこれを楽しみに本作をプレイした方も多いのでは?

部屋を移動すると時折セーブデータが消えてしまうバグがあるのですが、わかっていても体は勝手に風呂場のほうへ……。あ、画面内の時計を見てわかると思いますが、風呂覗きは午後10時過ぎが狙い目ですよ!

こういったコミュニケーションゲームで最終的に別れを迎えるのは、今ではこのジャンルの定型のひとつになっている気がします。井上トロたちに言葉を教える『どこでもいっしょ』や人面魚とおしゃべりする『シーマン』なんかも最後はお別れエンドだったような。いやいや、美少女と人面魚を同列に扱ったらダメですよね。

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