さて、本日もとんがったゲームを紹介していきますよ。
本日ご紹介するのは、美少女ゲーム界でトップクラスの問題作、
『奴隷 -オベイ-』
GAIAがリリースした作品ですが、このGAIAとはハイパースペースと同系列のブランドです。
要はこれ、超空間のゲームなのです。
このコーナーでは毎度の説明ですが、原画の使いまわしなどの恐るべき手抜きや、技術の進歩に置き去られたシステム、電波すぎるシナリオで他の追随を許さない独特な世界を持つメーカー、ハイパースペースのことを揶揄してユーザーは「超空間」と呼んでいます。すべての作品が常に酷いというわけでもなく、笑えるところもあるのがまた憎めないメーカーなのです。
タイトルの『奴隷』はどうあがいでもオベイとは読めませんが、「オベイ(obey)」は従う、服従するとかいう意味の言葉なので当て字なのでしょう。オベイってのが馴染みのない言葉なので混乱しますが、「魔法少女猫」と書いて「まじかるにゃんにゃん」と読ませるような感じかと思えばまあまあ納得。
そういえば、戯画の美少女ゲーム『この青空に約束を――』というゲームで従順すぎる幼なじみヒロイン海巳(うみ)の小エピソードタイトルに「オベイ?」という言葉が使われていたはずなので、少なくともあの作品のシナリオを書いた丸戸史明はオベイを知っているわけですね。
今や彼は映画化もするライトノベル『冴えない彼女の育てかた』の作者でもありますから、「あの丸戸史明もネタに取り入れたほどの美少女ゲームなんだぜ」というと少し箔がつ……いや超空間じゃ無理あるか。
作品の内容の話にうつりましょうか。まず、このゲームの何がとんがってるって、同じ超空間ゲーム『PIN-UP』のあれやこれやを使いまわして発売しているところですね。
原画は本当にそのまま使いまわして塗りだけ変えています。つまりそのまんま。トレースですらない。やきにくくりぷうぴでもトレースしかしていなかったのに、これに関してはそれすらしない堂々っぷりです。
この毒々しい色合いも、ゲームでこのまま表示されます。別に私が変に画像をいじって加工したわけではなく、この色が本当に使われているのです。
マップ移動画面は、見ての通りですが左のPIN-UPの文字がそのまま残っていますし、ヒロインの名前もPIN-UPのままになっています。一応、本作ではヒロインの見た目はそのまんまですが名前だけ変更されているので、移動画面の表記が完全に間違えている……というか『PIN-UP』からの流用を隠す気がまったくないのがはっきりとわかりますね。
同じ原画を使うにしても、例えば「同じ原画を使ってどこまで違う話を構成できるか」をコンセプトにした四月馬鹿企画としてならアリだったかもしれませんが、商業作品としてはやったらダメなやつでしょう。
しかし、このおっぱいにローター当ててるCGはいったい何作品で使いまわされているのでしょう。少なくとも知っているだけでこれで3タイトルめなんだけども。超空間的には究極至高のおっぱいという位置づけなのか、おっぱいへのこだわりのなさから「もーこれでいいんじゃね?」とばかりに使いまわしをする決断に至ったのか。答えは謎ですが、兎にも角にもエコではあります。
シナリオの方もそう大きくイメージが違うわけではありません。『PIN-UP』は主人公は性犯罪者予備軍だと確信している両親が主人公の性欲を受け止めさせるために3人の女の子を送り込んでくる話なのですが、『オベイ』ではすでに犯罪者である主人公が聖職者への生贄となる女性をエッチな道具で教育する話なので、さほど話の系統に違いがありません。主人公に関しても犯罪者予備軍から犯罪者に変更された程度の違いなんです。だから、
「あ、ついにやっちゃったんだ。ふーん」くらいの感想しか浮かばない。
本編は設定上のあらすじに合わせて一部を変更しているくらいで、内容に影響のない箇所はそのままです。ヒロインの口調なんかも同じ。名前は違っているから、超空間的にはそっくりだけど違う存在と言いたいのでしょうかね?
ちなみに上の一枚が『PIN-UP』のほうの会話シーン。目のハイライトが消えてる程度の違いしかありません。
本作は山奥の怪しげな場所を舞台にしているので背景だけは妙におどろおどろしい雰囲気になっていますが、ヒロインの性格・口調や主人公とのやり取りもほぼそのまんまなので、同じゲームを繰り返しプレイさせられている気分になります。まるでループものです。「生きてる人、いますか?」とか懐かしいゲームのセリフが頭に浮かびました。『CROSS†CHANNEL』は面白いからいいけど、こっちはメッセージ速度すら変えられないシステムだからどんなにつまらなくても面倒でもじっくりクリックさせられるのが本当に辛い。いやあ、やってられませんね。
ちなみにシナリオは使いまわしているだけで、別に『PIN-UP』の続編とかIFストーリーとかいうわけでもないです。単にエコなだけです。
同じ超空間ゲームでも、お兄ちゃんが謎の電波を受けて女の子にイタズラしまくる『お兄ちゃん受信中』のほうがずっといいですね。ヒロイン含む主要登場人物全員がイカれてるというぶっ飛んだ作品ですが、頭がおかしいなりに好き放題やっていたので、プレイヤー側も「楽しそうに生きてんなあ」と笑って観ていられましたから。ケツに懐中電灯ぶっさして蛍の気持ちを体験するシーンのあるエロゲーは名作。
でも、本作のこれは流石に酷い。
こんなことをやらかすなんて、原画担当とシナリオ担当が同月同日に失踪でもしたのでしょうか。音信不通になるくらい程度ならままあるらしいから、ありえない話でもないのがこの業界の恐ろしいところですね。まあ単なる想像ですが。
シナリオ、原画も同じならゲームの流れも同じなので、『PIN-UP』と同じく『奴隷-オベイ-』でも女の子のところにエッチなオモチャやら野菜やらを持っていってプレイに励むことになります。
だから一本のにんじんが女の子とそれぞれ同じくらいのスペースの部屋を与えられて暮らしている謎設定も引き継いでいますし、なんなら部屋の配置を変更してすらいません。攻略情報まで流用できるとかどんだけ手抜きなんだ……。
『奴隷-オベイ-』と『PIN-UP』は、バイブだろうがピンクのブルブルするヤツだろうが1部屋に付き1つのアイテムか1人の女しか置きませんからね。デッドスペースありすぎて、災害発生時には余裕で集団避難所にできるレベル。ゾンビハザードが発生しても隔離が楽だよ! とか物件のおすすめポイントとして成立するのか疑問ですけど。
最後に、いくつかエッチな画像を置いときますね。
さて、『奴隷-オベイ-』はいかがでしたでしょうか。あまりにも薄い内容を持ちながら、あまりにも濃い存在感を放つ特殊なゲームではありますが、話のタネに遊んでみるのもあり……かも?
それではこの辺で。また次回もよろしくお願いします。