#0 まずは自己紹介
皆様初めまして。FM-7関係のサークルでレトロイベントなどに参加しているmaruanと申します。以後お見知りおき下さい。
私自身は開発者でもなく、ツイッターで「FM-7好きの姪bot」という、ユーザー寄りのネタ活動を続けているだけの、FM-7が好きな一個人です。
とはいえ長年いろいろ活動を続けていると、FM-7で凄い活動をなされている方々との接点もでき、そんなこんなでこの場で好きなことを書かせていただくことに相成った次第です。
よく言えば潤滑油、冷静に考えれば刺身に添えられたタンポポのような存在を志向しつつ、FM-7やFM77AV、またそれらを取り巻く当時の状況なんかについて、好き勝手に語らせてもらえればと思います。
ここ10年位のレトロPC界隈、主にレトロPCイベントやSNS上では、インパクトのある成果物を発表されている個人の方が多くいらっしゃいます。
ぱっと思いつくだけで、PC-6001、X1、X68000、ぴゅう太などなど。
他にも様々な機種で活動されている方々も居られるとはいえ、アクティブに活動されている方々が扱う機種には、かなり偏りが感じられます。
当時のユーザー数と比例しているわけではなく、個々の思い入れの大きさによるわけで、当然といえば当然ですが、どうもFM系が少ない。
レトロPCイベントでもFM系サークルが出ていることはあまりない。
うん、何かがおかしい。
1982年から85年頃は、少なくともPC-88,FM-7,X1あたりが三大勢力だったはずだし、1985年以降もPC-8801mkIISR以降>>>X1turbo>FM77AV位の位置付けではあったはず。
実際のシェアだけでなく、思い入れが大きい人も多いはず。
というわけで、FM-7系が好きな人の拠り所があるといいな、と勝手な使命感を感じつつ、細々と活動を続けています。
さて、そんな私が何を語りたいかというと、当時の空気感です。技術的な話などは、他の方々にお任せしております。
当時の空気感と言っても、別にハードウェア戦争や各機種間の派閥、確執を煽りたいわけではありません。
しかし当時の価格帯を考えれば、まずどの機種を買うかは「取り返しのつかない選択」でした。
近年のゲハ論争などの比ではありません。何せ当時の8ビットPCは、10万円から30万円程度はします。
もちろん社会人の方や経済的に恵まれていた方は「あー、この機種もうソフト出ないな。PC-88の最新機種買うか」で済ますことが出来たかもしれません。
しかし、80年代に当時小学生から中学生だった筆者と同年代の方々の多くは、自分が持つハードにソフト供給が少なくなっていき、他機種が羨ましく思えたということは共通の体験だったと思います。
ということで、1984年前後から話は始まります。
#1 1984~85
そうだ、FM-7を買おう(※厳密にはFM-NEW7)
当時小学生だった筆者。ラジコンブームの中でマイティフロッグを買う友人。それならオイラは格安のグラスホッパーだ、では俺は新しく出たホーネットを買ってやるぜ、と友人たちの盛り上がりを羨ましく眺めつつ、オイラはパジェロを買うべきか、いやしかし…と、次に来るであろうマイコンブームの到来に備えて小遣いを貯めておりました。
その原動力は、経済力豊かなアーリーアダプタの友人たちの家で遭遇したマイコンたち。PC-6001で『ミステリーハウス』をやったり、6001mkIIで『デゼニランド』をプレイしたり、ナイコン状態なのに入門書でBASICの基本を覚えてエア入力したりと、小学生の自分は、とにかくコンピュータを自分で扱えるということに未来を感じていたのです。
まあ奇麗ごとは置いといて、『デゼニランド』の受付のお姉さんに「S〇X」とか入力して、返ってきた反応に友人たちとゲラゲラ笑う、といった下品な楽しさを追求していたことは否定しません。小学生ですし。
さて、詳細な経緯は省略しますが、当時の好景気な経済を背景に、正月に遠方の親戚を多く訪れることで自らの懐を増やしつつ、親の懐を軽くする諸刃の所業により、なんとか中学生になった頃には10万円ちょっとのマイコン購入資金を確保します。景気がいい時代でしたね。
時は1985年初頭。
さて、どの機種を買うべきか。
自分が一番マイコンに期待していたことは、CG。いわゆる美麗な静止画を表示したい! 自分で描きたい! それができる機種(で予算内のもの)は何か?
そんな優先順位で機種を選定します。
当時の自分の思考ロジックでは、予算の増加とともに順番に
(候補)
・MSX 安い。でも256×192でグラフィック性能的にはちょっと。予定より予算が出来たので、もう少し上位機種狙おう。
・MZ-1500 なんかクイックディスクってすごい。でも画面は320×200ドット。あと『サンダーフォース』以外ソフト少なそう。
・X1F model10 出たばっかりで新BASICで安い。筐体がカッコいい。
・FM-NEW7 アドベンチャーゲームとか多い。デュアルCPUってスゲェ。キーボードがすごく立派。えっちなゲームとか出てる。本体色はややカッコ悪い。あとタモリ。
(選択外 主に予算的に)
・PC-8801mkIISR 25万円以上は無理。最初から選択外。
・FM-77 高い。
・X1turbo 高い。
つまりFDD搭載機種は予算的に手が出ないという状況でした。
FM-7/FM-NEW7のスペック
CPU MBL68B09 8MHz x2個 ※1
RAM 64KB / VRAM 48KB
表示機能 640×200ドット 8色
サウンド PSG(8オクターブ3和音)
拡張IF 内部2、Z80専用1
カセットIF 1,600bps
FDIF、漢字ロム、RS232Cなどはオプションで対応
価格
FM-7 126,000円 (1982年)/FM-NEW7 99,800円 (1984年)
FM-NEW7は高集積化してコストダウンしたもので、性能はFM-7と全く同一
640×200ドットで、フルカラー8色というのが最大のポイント。この時期のホビーパソコンでは、1985年1月に登場したPC-8801mkIISRのアナログ512色中8色というスペックを除けば、上位グレードのマイコンと肩を並べる性能でした。
FM-7ってアドベンチャーゲームが多いことが魅力に思えたんですよ。裏を返せばアクションゲームには不向きな性能だったことに、購入当時は気が付きませんでしたが。
あと、この選択だとX1F model10の方が安価なため、普通に考えれば上位の選択肢になりそうですが、
・BASICが立ち上がるのにカセットを読み込む時間が必要なのが嫌
・なんかかっこよすぎる
という、非常に捻くれた選考により、FM-NEW7の方に魅力を感じてました。
思えば最初からデザインがカッコいいものに対する変なコンプレックスがあったようです。
さて、予算10万ちょいだと、本体以外買えないのでは? と思われる方も当然です。
そこは抜かりなく事前準備がありました。
当時は「ニューメディア」という言葉に皆が踊らされていた時代。
家電メーカーもあの手この手で高額な付加価値を付けた製品を販売しています。キャプテンシステムはどこに行った?
そんなわけで、ナショナルが誇る家庭向けテレビのフラッグシップ機「α2000X」の21インチモデルが、マイコンを買う以前から居間に導入されていたのです。
これならRGBも8ピン、21ピン両対応。なんでも繋がるぜー。
この機種選定に関しては、当時弟である自分より優れている兄(ジャギ的な表現)が奸計を巡らし、家族を抱き込むことで自分好みの最新機種を購入させていたのです。恐るべし、兄。
ということで、自分の部屋で楽しむことはできませんが、RGBのクッキリ画像の前にはそれも些事。予算は本体とデータレコーダー分で、ギリギリなんとかなりました。
そんなこんなで、無事FM-NEW7を購入できました。
最初のマイコンに、同じような理由でFM-7,NEW7を選んだ人は、結構多いと思うんですが、どうでしょう?
※1 FM-7からFM-77までのCPUは「MBL68B09」、FM77AV以降は「MBL68B09E」が搭載されています。前者は4倍周波数のクロックを内蔵のクロックジェネレータで1/4に分周するため、カタログの表記は8MHz、後者はそのまま2相クロックが供給されるため2MHzと記載されますが、CPU速度だけで言えば同一となります。
当記事に関連する商品紹介