当初は私自身、ここまで続くとは予想できなかったパーフェクトカタログだが、主だったゲーム機はたいていやり尽くした状態で次に手掛けた題材はなんとバンダイゲーム機の特集本である。
実は本書に掲載したハードはいずれもぜひ扱ってみたかった機種ばかりだったのだが、いかんせんテーマとしては小粒なものばかりで1冊の本にまとめるにはページ数も少なく、また読者がついて来てくれるかどうか不安であった。とあるレトロゲームコレクターさんにこの話題を切り出したところ、「だったら1冊にまとめてみたらいいんじゃないか」という言葉をいただき、あれよあれよと実現に向けて企画がまとまっていった次第である。何でも言ってみるもんだ。
そんな経緯で始まったバンダイゲーム機であるが、1冊にまとめる過程において当時のバンダイがどれだけデジタルエンタテインメントという分野に注力してきたかが今更ながらひしひしと伝わってきた。
TV JACKでエレクトロニクス玩具の分野に参入してから、さまざまなアプローチでデジタルエンタテインメントというものを模索してきていた。結果的にそのほとんどは成功したとは言いがたく、歴史の波に飲まれてしまったゲーム機たちばかりである。しかし、それらの試行錯誤は決して無駄な努力ではなく、そういった知見の積み重ねがあればこそ、単なる玩具メーカーの枠を超えた総合エンタテインメント企業として存続できているのではないか。今では本心からそう思う。
本書では、バンダイがこれまで手掛けてきたゲーム機(中にはゲーム機とは呼べないものもあるが)について、単なるハードやソフトの紹介ではなく、当時のバンダイが何を思い描いていたのかを現在集められる資料をもとに可能な限り考察してみた。
もちろんゲームは遊ぶものだし、楽しむことができればそれがエンタテインメントの本懐である。しかし、数十年経った今だからこそ振り返ることで見えてくるものに思いを馳せるのもレトロゲームの楽しみ方ではないか。特に今回の本ではそれを改めて考えさせられた。本書を手にとってくださった皆様の中にも、何かひとつ心に残るものがあれば本書を企画・編集・執筆した者としてこの上ない喜びである。
2021年5月 前田尋之