さて、本日もとんがったゲームを紹介していきますよ。
今回ご紹介するのは、ガイナックスがPCエンジン向けにリリースしたアクションRPG
『ゲッツェンディーナー』(1994年/PCエンジン)
キャラクターデザインは『プリンセスメーカー』の赤井孝美、シナリオは『夢幻の心臓』や『ソーサリアン』などで知られる富一成が手掛けた1作です。華やかというより、手堅いといった印象の人選でしょうか。実際、ゲームの雰囲気やグラフィックはかなり良いのではないかと思います。
ちなみに タイトルはドイツ語で「偶像崇拝者」を意味するそうです。翻訳サイトによれば異教徒や崇拝者といった意味にも取れる言葉のようです。
本作の舞台は剣と魔法のファンタジー世界。魔神復活の生贄として魔王にさらわれた姫を勇者が救出に来るという王道展開を題材としつつ、兵士たちと共に城へ乗り込んできた勇者が魔王と相討ちになって死亡する場面から物語が始まります。
このゲームの主人公は囚われていたお姫様(ミーサ)なんですね。敵の親玉がやられて晴れて即自由の身かと言えばそうではなく、彼女は未だモンスターがうろつく城内を、そして城がある無人の島をたった1人で脱出しなくてはなりません。城内には色々とギミックがあり、それを解いて先に進む必要があります。勇者の助けを待っていたとはいえ姫も戦えないわけではないので、謎を解きつつモンスターをバッサバッサ斬り倒して進みますよ。敵は目がよくないようなので、立ち回りが上手くいかないならザコは避けてもいいかもしれませんが。
命の危険がある状況にめげず、息絶えた勇者の剣を手に姫自ら苦難に立ち向かおうとするシーンが最序盤のビジュアルシーンで描かれていて、雰囲気がすごく良いゲームだなあと感心させられました。魔王はクラウザー三世に似てるけど。
上のビジュアルシーンが個人的にすごく好きです。助けを待つ身だったお姫様が剣を手に取り、動きやすいようドレスを裂き、綺麗に伸ばした髪をまとめて、生き抜くために変わろうとする強さが表れていますよね。キャラクターのドット絵がムービーの内容に合わせて変化する演出もいい。このビジュアルシーンの原画・演出は鈴木俊二が手掛けたそうです。補足すると、アニメ版『新世紀エヴァンゲリオン』と『ふしぎの海のナディア』の1話の作画監督も務めた方ですよ。
上のほうで画像のキャプションにも書きましたが、このゲームのストーリーは作中であまり描かれず、かなり端折られています。説明不足といえば確かにそうなのですが、個人的には文章やセリフ以外で表現されている部分で十分なように感じました。魔王とその配下、勇者と兵士たちが激しく争った形跡が城に残っていて、モンスターの死骸なんかもそこらに転がっているので、「戦いは熾烈を極めた」ということがテキストで表示されていないにもかかわらず伝わってきます。
そもそもこのゲームを開発したガイナックスってエヴァも作ったところですし。意味深で説明不足なのはもうそういうのが「ガイナックス味」かなあと思って気にしなかった部分が大きいのかも。監督は違うんですけど、なんとなくイメージで。
ちなみに、ゲームの発売に先駆けて『電撃PCエンジン』で本作の小説版『不屈の女神 ゲッツェンディーナー (著:菅浩江) 』が連載されていて、さらに書籍版も発売されているので、「作中での描写では物足りない」「もっと話の内容を深く知りたい」という方はそちらをチェックしてみるといいでしょう。
ただ、ギミックに関しては作中でもう少し説明が欲しかったですね。触れると体力が回復する像とか、その辺にある火を姫が魔法で飛ばすことができるとか、そういったことがまったくわからない状態で模索させられるので。操作のちょっとしたチュートリアルくらいは欲しかったなーと。ゲーム画面右下にある宝石みたいなのはいわゆる体力ゲージなのですが、これもわかりにくいですし。見た目は綺麗なんですけどね。
まあ、この時代のゲームに対して求めすぎかもしれませんが。というかそもそも私が「説明書を読まずにゲームする派」なのがいけないのでしょう。どの道、このゲームに関しては中古で入手したために説明書がそもそも付いていなかったからどうしようもなかったんですけどね。
それと難点は、ものすっごく操作性が悪いことですね。4方向への移動すらやりづらいったらないです。クォータービューで移動は常に2方向入力しての斜め移動だからかもしれませんが、思ったように動かなくて面倒でした。キャラクターの向きや立ち位置の調整がうまくいかなくて何度モヤモヤさせられたか……。いや、ずっとモヤモヤしてるから回数自体は少ないかもしれません。体内のカルシウムに継続減少ダメージが入ったと表現した方がいいのかな。
このゲーム、見た目はいいのにゲーム部分は大味なんですよね。ギミックも、難しいのもあれば落とし穴ばっかりなところもあったりと作りこみの甘さがちょっと見られるので。
鳥に乗って飛ぶシーンも羽ばたくところが省略されていて、跨ったと思ったら次の瞬間には別の場所にいる……なんてこともありましたし。ゲーム内の演出はいいだけに色々もったいないなーと感じました。調整がうまくできていればもっと高い評価も得られた作品だと思いますよ。
小説が先に出ていたので発売時期を合わせる必要もあったでしょうから、ゲーム内のアイデアを練り込む期間が短かったのかもしれません。まあ、そこは想像でしかありませんけどね。
さて、『ゲッツェンディーナー』がどういうゲームか少しでもわかっていただけたでしょうか。操作性はホンットにうんこですけど、個人的に雰囲気はとっても好きなゲームなので興味を持ってもらえると嬉しいです。戦うヒロインが好きという方には特におすすめですよ。
それではこの辺で。また次回もよろしくお願いします。