とんがりギャルゲー紀行 第10回:制服伝説プリティファイター

よく考えると今回の紹介作品はギャルゲーではない気がしますが、広い心でお付き合いくださいね。
本日紹介する『制服伝説プリティファイター』は、格ゲーブーム真っ盛りの1994年に発売されたスーパーファミコンの2D対戦格闘ゲームです。
のちにリメイク版として作られた『プリティファイターX』、キャラクターを数人引き継いだ後継作『FIST』の原点となった作品です。『FIST』はセガサターンのクソゲー四天王の中に数えられていますので、本作を知らずとも『FIST』は知っているという方も多いのではないでしょうか。
ちなみに発売はイマジニア。『メダロット』シリーズなどでも知られる会社です。


一応『FIST』の参考画像も貼っておきますね。ポリゴン黎明期でもない1996年末頃の作品(『バーチャファイター3』が登場した年)なのにこのビジュアル……。

実は『制服伝説プリティファイター』の世間での評価はあまりよろしくないようです。
というのも、格ゲーとしては色々と疑問が残る内容だったからでして。その例をいくつかあげてみますね。
・ヒットバックのない技ばかり
・ネタ重視でまったく使えない必殺技がある
・溜め技オンリーで簡単にハメられる
・ガード崩しであるはずの投げ技がガードされると使えない
以上のように、対戦格闘ゲームとしての完成度は決して高くはないのです。


オプション画面なんてストⅡそっくりですし。

クソゲーとも言われる本作ですが、個人的には好きなほうです。ゲームバランスを生贄にしてネタの神様でも召喚したのか、笑いどころがたっぷりあるんですよ。
まず必殺技からして色々とおかしいです。
ナースの必殺技が「おしりプー」ってなんなんでしょうね。


「おしりプー」参考画像。

このクリスという娘は他にも聴診器で突く「聴診器フラッシュ」、注射器で謎の白い液体をぶっかける「メディカルシャワー」、足をおっぴろげて回転する「ぱっくり旋風脚」といった珍妙な技ばかり持っていまして、おかげで白衣の天使というよりイメクラ感が漂っています。
必殺技がひどいのはクリスだけではありません。
というかまともな必殺技がほぼありません。
柔道着のやわらは必殺のカンチョー技を繰り出し、メインキャラクターのマリンはポケベルでマッチョ男を呼び出し、ブルマ姿のアイはバナナを食べて回復するというカオスっぷり。このギリギリアウトな感じがたまりません。ひとたびプレイすれば「なんだこれ」と笑えること請け合いです。機会があれば必殺技コマンドだけでも見てみてください。それだけでも楽しめます。
そういえば、マリンに呼び出される男は彼氏というわけではないらしいですよ。アイツあの娘の何なんだ?


パシリ疑惑浮上中のマッチョ参考画像。


クリアがままならなかった方のために、おまけとしてクリア画面をお見せしますね。

ストーリーがさっぱり想像できないクリア画面ですが、とびきり変なものを選んだというわけではありません。そもそも彼女たちが戦う理由すらろくに明かされていないので、どのキャラクターを使用しても謎は深まるばかりなのです。ストーリーに関しては説明書はおろか攻略本ですらろくに触れられていないところなので、あまり深く考えてはいけないのでしょう。パチンコ屋をバックに戦っている姿を見ると、まるで早朝の繁華街でイメクラの姉ちゃんがホストを巡ってリアルファイしているかのように思えてきますが、さすがにそういうわけではないようです。
リメイク版であるセガサターンの『プリティファイターX』では冒頭とエンディングにアニメが追加されましたが、やはりストーリーはよくわからないまま終わります。私が知る範囲では「色々ツッコミどころはあるけれど、キャラクターが可愛いからまあいいか」というのがこのゲームのファンの共通認識のようです。なので、まあいいのではないでしょうか。謎に満ちたストーリーも、制服伝説の名を冠しているのに半分くらいの娘が制服を着ていないことも、きっと気にしないほうが楽しめます。
総評としてはクソゲーというより笑えるバカゲーという印象の作品ですね。聞いた話ではエロ雑誌の裏表紙に広告が入っていたそうですので、公式は初めから対戦格闘はおまけのイロモノゲームとして売り出していたのかもしれません。そう考えると狙い通りのウケ方だったのではないでしょうか。
バカゲーとはいってもBGMだけは素直に素晴らしいですよ。知名度は高くありませんが、本作の音楽はゲームミュージック界で夭逝の天才と呼ばれる森彰彦によって生み出されたものです。どれも良曲揃いですので、プレイせずともBGMとコマンド集だけでも楽しめると思います。
個人的にはタイトル画面の曲が特に好きでして、実をいうと本作をプレイすることよりもスーファミにセットして電源を入れてぼーっとするほうがずっと好きだったりします。

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