とんがりギャルゲー紀行 第62回:FIST

さて、本日もとんがったゲームを紹介していきますよ。

今回紹介するのは、格ゲー界に悪名を馳せたあのゲーム、

『FIST』

1996年イマジニアがプレイステーションとセガサターン向けにリリースした対戦格闘ゲームです(当記事内のスクリーンショットは基本的にプレイステーション版のもの)。以前ご紹介した『制服伝説プリティファイター』と『制服伝説 プリティ・ファイターX』に続く美少女格闘ゲームシリーズの一作でもあります。

▲オープニングムービーの一部カット。セガサターン版は未収録。

国府田マリ子や大谷育江、氷上恭子、井上喜久子などキャラクターボイスを務める声優陣が豪華なことでも知られていて、 パッケージ裏に「史上最強アイドル決定オーディション開催!!」と書かれていることからもヒロインたちの可愛さ、魅力をアピールして売り出そうとしていたのがうかがえます。まあ、なぜかたらこ唇のおっさんなども参戦しているんですが。流石にたらこ唇はアイドルに向かないんじゃないかな……? とは思いますが、最近はヤクザが性転換&美容整形して美少女アイドルになる作品もあるし、まあいいか。

なんというか、開発会社ですら作品のセールスポイントをあんまり意識していない感じでふわふわしてますね。とはいってもストーリーに関してはゲーム本編でも驚くほどノータッチなので気にしても意味ないのかもしれません。シナリオモードというのがあるのですが、ただ連続でCPUと戦っていく1P用モードというだけなので……。『制服伝説プリティファイター』でもストーリーにはまったく触れられていませんでしたし、そういうシリーズなんだと思っておけばいいでしょう。

というか、このゲームの問題はそこではありませんしね。

じゃあ何が問題で低~い評価を得るに至ったかというと、ずばりポリゴンのひどさです。

上の画像を見たらわかっていただけるでしょうか。キャラ萌え系格闘ゲームだというのに肝心のキャラクターがこんななんです。当時は今よりポリゴン技術が未成熟で見た目カクカクしていたのは事実ですが、「これはひどい」と評されているのは発売当時からですからちょっとフォローできないんですよね。

▲セガサターン版の画像。この一枚以外はすべてプレイステーション版のもの

ちなみに上の画像に写っているのは、着ぐるみを身にまとった美少女「どつき」ちゃんです。すごいポリゴンでしょう。これ、一部では「段ボール」とか呼ばれているそうですよ。

シナリオモードを一通りクリアすると使用したキャラクターの設定画などを含んだムービーを見られるのですが、それによるとどつきちゃんは設定上ではちゃんと着ぐるみらしい丸っこいフォルムをしているようなんです。

それがゲーム中ではこのような姿になっているんですよ。しっぽもほぼありませんし、『キン肉マン』に出てきたサンシャインみたいな足してますし、設定上の質量どこやったんでしょうね。こいつはプレイヤーを悩殺せずにキン肉マングレートを殺す体つきですよ。あとファスナーがでかすぎるのも気になります。

設定画のままゲームに登場したとしても、そもそもこれなんの動物なんでしょうか。ネズミかたぬきのようなフォルムなのに「ニャー」とか言ってますし、イラストですら指の長さや着ぐるみの顔部分のデザインにまでブレがあるのでなにがなにやら。

▲着ぐるみのどつきがばかり取り上げられるが、他キャラもなかなかひどい

そういえば、こういうCPUたちと連続で戦っていくモードって普通は2Pカラーの同キャラを最後に持ってくるものだと思っていたんですが、実際は違うのでしょうか。シナリオモードを遊んでみたらしょっぱなから同キャラ対決になってちょっと驚きました。もう一度プレイしてみたら最初に同キャラと決まっているわけでもなかったので、少なくとも本作では規則性なしのランダム順みたいなんですよね。

試合の間に入るカットイン。こちらもセガサターン版には未収録。

ストーリーがほぼなくてあっさりしたゲームかと思ったら、バトルの合間にはキャラクターの個性が見えるカットインが入ったり、ホントにどういうスタンスで楽しんだらいいやらよくわからない作品です。イラストはそれなりに可愛いので、無理に3Dにせず2D格闘ゲームにしていたら評価は違ったのかもしれません。

まあ、セガサターン版はOP・EDムービーとカットインが収録されていないんですけどね。

その代わりといってはなんですが、セガサターン版のみダウン中の追撃や空中コンボが可能で、攻撃モーションこそプレイステーション版に比べて地味に見える部分はあるものの、ちゃんと遊べる内容になっています。同タイトルなのにこのような違いがあるのは、セガサターンの場合はセガがサードパーティー用のライブラリ(ゲーム開発のテンプレートみたいなもの)を配布していたからなんだそうです。セガサターン版のほうは開発技術のハードルを下げてくれるものがあって、プレイステーション版のほうにはそれがなかったというのが同タイトルでプレイ感覚に差がある大きな理由だったんですね。

つまりキャラ萌え要素に長けたプレイステーション版、対戦格闘ゲームらしさに特化したセガサターン版と、それぞれ良いところがあるというわけですね。

まあ、キャラ萌えゲーとしても格闘ゲームとしても、『FIST』より良いゲームはいっぱいあるかもしれませんが、話題になった作品ですし、操作もシンプルでとっつきやすいので安価で入手できれば遊んでみるのもありだと思いますよ。

▲プレイステーション版の操作設定画面

見てください、ボタンも半分も使わないんです(アナログスティック付きのデュアルショックならもっと少なく感じる)。

ゆるーい対戦格闘ゲーム『にとうしんでん』でももっと色々使ってたと思うのですが、潔いというかなんというか。 本作では投げが特に強いので、これくらいシンプルでいいんでしょうね。 ちょっと寂しい気もしますが、初心者にはこれくらいが混乱せずに遊べていい……かも?

それでは今回はこの辺で。また次回もよろしくお願いします。

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