第7回:ニチアサのお楽しみ「パソコンサンデー」

その昔、私が毎週楽しみに視聴していたテレビ番組にパソコンサンデーというものがありました。

関東圏では毎週日曜日の朝9時半からテレビ東京で放送されていた30分番組だったのですが、Dr.パソコンこと宮永好道氏のパソコン講義、栃木マイコンクラブの高橋雄一氏によるワンポイントテクニック、ベーマガライターの山下章氏によるゲームソフト紹介など、多数のコーナーから構成された情報番組です。シャープ1社による単独提供だったため登場する機種はすべてシャープ製、前出のレギュラー出演者もシャープに縁がある面々で構成されていました。まだパソコン関連の情報といえば紙の出版物しかなかった時代に、実際に動いている映像で解説してくれるわかりやすさと、何よりシャープオフィシャルともいえる内容がX1ユーザーだった私にはまさにどストライクな内容でした。

この番組のユニークな点は「パソコン道場」という視聴者参加型企画と、視聴者のプログラムをテレビの副音声で配信していたところにあります。

近年ではすっかり廃れてしまった視聴者参加企画ですが、1980年代くらいまではそこそこ残っており、「パソコン道場」はそんなテレビに出演することが憧れだった古き良き時代を感じさせるコーナーです。「たのもー!」の掛け声とともにあらかじめ収録された視聴者の映像とともに自作のプログラムを紹介、その後スタジオに戻ってレギュラー出演者が評価・解説を加えるというものでした。

プログラムの配信は音声多重放送対応テレビの副音声で実現しており、なんと音の状態で放送したものを、各々の家庭でテープレコーダーを使って録音するという代物。どう考えてもノイズが乗りまくりな方法だったため、残念ながら私の環境ではダウンロードに成功した試しはありませんでしたが「電波を使ってプログラムを配信する」という未来感あふれるその企画にスゴイ!とただただ驚いたものです。

「シャープ1社単独のパソコン情報番組」というコンセプトが費用対効果に見合わなくなったのか1989年に放送を終了してしまいましたが、動画を検索すると今でも多数見つけることができ、愛されていた番組だったんだなと感じさせてくれますね。

夢を、超えた。パーソナルワークステーションX68000

1986年の10月、パソコンサンデー発の驚くべきニュースが飛び込んできました。シャープのX1後継機にあたる新しい16ビットパソコン、X68000の発表です。残念ながらその第一報が放送された回は見逃していたのですが、週明け月曜日のクラスでは仲の良い友人たちとその話題で持ちきりでした。

「65536色の色数」「128個のスプライトを搭載」「複数画面の独立スクロール機能」「『グラディウス』がそのまま動いている」……放送を見た友人は熱っぽく語るのですが、当時発売されていたどのパソコンともあまりにもかけ離れすぎた桁外れのスペックだったため、今ひとつ実像がイメージできず、私にはどうも眉唾としか思えませんでした。なにより第一印象が「X68000?語呂が悪い名前だなぁ」でしたから。

そもそも16ビットマシンといえばPC-9801みたいなビジネスマシンというイメージが強く、ビジネス機にスプライト(画面内のキャラクターを自在に重ね合わせたり動かしたりできる機能)を搭載してどうするの?というのが私の認識だったのです。

しかし、その後にパソコンサンデーで『グラディウス』開発レポートなど続報が放送されるにつれ、「これこそ本当にアーケードゲームがそのまま家で遊べるパソコンだ!」と身震いしたのを覚えています。

ベーマガはもちろん、翌年のマイコンショウなど、集められる情報はなんでも集めようと躍起になりました。

しかし、具体的な価格が発表されると、当時の中学生にはあまりにも高額なディスプレイテレビ込みで50万円。性能差を考えれば無理からぬ価格設定なのも理解できるのですが、さすがに諦めざるをえません。そもそも、ずっと初代X1を使っていて記録媒体がカセットテープだった我が身には、あまりにも一足飛びし過ぎる選択です。

そんなわけで、後に高校卒業後に見事ゲットするまでの向こう4年間は、遠目にX68000に憧れつつX1を使い倒す時期を過ごすこととなります。

 

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ABOUTこの記事をかいた人

1972年愛媛県松山市生まれ。アーケード、家庭用、PCはもとより美少女ゲームまで何でも遊ぶ、ストライクゾーンの広い古参ゲーマー。ただし、下手の横好きがたたり、実力でクリアできたゲームの数は決して多くないのが弱点。