第5回:パソコン雑誌&学習マンガの話

これまでの連載を読み返してみると、私の中で『こんにちはマイコン』と『マイコンBASICマガジン』の影響がいかに大きかったか、改めて気付かされますね。

当時はネットのような個人間の情報交換手段もなく、またパソコンを持っている友人もいなかったため、情報と呼べるものは入門書やパソコン雑誌くらいしかありませんでした。しかもこれらは基本的に情報を受け取るだけの一方通行だったため、新しい知識を吸収することはできても、私の疑問に都度答えてくれるものではありません。そのため、自分で作ったプログラムは自分自身で評価するしかなく、独りよがりなものばかりであったことは否めませんでした。残念ながら当時のカセットテープは残っていないため、どんなプログラムを作っていたかもはっきりとは思い出せませんが……。

というわけで、今回はX1とは直接関係ない話題ですが、当時影響を受けた「出版物」について触れてみたいと思います。

パソコン雑誌

パソコン雑誌は大きく分けて4つのカテゴリに大別され、基本的に下にいくほど創刊が遅くなります。

  1. 業界動向や技術情報が主体のオピニオン情報誌『アスキー』(アスキー出版)、『マイコン』(電波新聞社)など
  2. 自分で打ち込んで楽しむプログラム投稿誌『I/O』(工学社)、『マイコンBASICマガジン』(電波新聞社)など
  3. 市販ソフトが主体のエンタメ系情報誌『ログイン』(アスキー出版)『テクノポリス』(徳間書店)『POPCOM』(小学館)、『コンプティーク』(角川書店)など
  4. 上記のすべての情報を内包して特定機種に特化した大本営誌『Oh!PC』『Oh!FM』『Oh!MZ』(いずれも日本ソフトバンク)など

『マイコンBASICマガジン』はプログラム投稿誌でありながらソフト情報に力を入れていましたし、『ログイン』や『テクノポリス』は初期こそプログラム投稿誌だったわけで、上記の分類は必ずしも正確ではありません。が、ポイントは「パソコンそのもの情報」→「プログラムを自分で作るための情報」→「市販ソフトを楽しむ情報」といった具合に、パソコン雑誌に求められる情報の質が変化している点にあります。

これはまさにパソコンというものの立ち位置が「自作するもの」から「プログラムを作るもの」へ、さらに「市販ソフトを活用するもの」という風に変化していくにつれて、雑誌媒体のあり方も時代に応じて変化が求められたことが大きな要因といえるでしょう。

私自身は最初に触れたパソコン雑誌だったのと、内容面で相性が良かった(プログラム投稿誌の中では比較的年齢層が低い)ため、ずっと『マイコンBASICマガジン』を購読していたのですが、それ以外の雑誌は主に大抵書店での立ち読みでした。小学生ではそれほど雑誌を買うお金もなく、ベーマガが唯一の情報チャンネルだったのです。

学習マンガ

1970年代末から1980年台半ば頃まで、「ひみつシリーズ」(学習研究社)に端を発する学習マンガブームというものがありました。マンガ読みな私としては当然ながら多大な影響を受けたシリーズなのですが、それ以外の学習マンガも多数読んでおりました。とりわけパソコンは割とオタク色(当時はオタクという言葉は一般化しておりませんでしたが)が強いメディアである点と、当時の小中学生男子に注目されていたホビーであったことから、学習マンガとは親和性の高いジャンルだったのも理由に挙げられるかもしれません。このジャンルのパイオニアといえばなんといっても『こんにちはマイコン』なのですが、これはすでに何度も登場していますので、それ以外の中から特に印象に残っている2つをご紹介しましょう。

今回紹介した2作品がどちらも学研なのは単なる偶然ですが、同社がいかに学習マンガという分野に力を入れていたかが伺えます。

らくらくパソコン(学習研究社・立木じゅん/水谷紀雄著)

212ページの単行本にPC-6001、PC-8001mkⅡ、FM-7、MZ-700、MSXの5機種プログラムを詰め込み、「5機種マルチ対応」を謳ったパソコン入門マンガ。対象読者レベルは『こんにちはマイコン』とほぼ同じですが、ややくどいくらいに丁寧に説明されているのが印象的です。3巻まで発売されており、「パソコンを学習する」というよりは「プログラムを打ち込んですぐ楽しめる」スタンスですね。

マイコンに強くなるLS愛ちゃん(学習研究社・安田タツ夫(ダイナミックプロ)著)

ライバルキャラの優は、蝶ネクタイにスーツながら半ズボンというナイスガイ

同社の宅配専門月刊誌『6年の科学』に連載されていた学習マンガ。同誌のパソコン関連記事のカットにも使われることが多く、結構人気があったと思われます。残念ながら単行本化はされていません。主人公がBASICを「ベン・シッコ」と聞き違えるボケをかましたり、相手がパソコンを持っているかも確認しないまま、ガールフレンドへのラブレターをPRINT文でプログラムしたカセットテープで送ったりと、小学生らしい微笑ましいネタが印象に残ってます。

これは余談ですが、当時のパソコン雑誌や学習マンガには大抵、パソコンの活用事例として「電話回線を使って遠隔地とのコミュニケーション」というのが掲載されていました。しかし、具体的にどのようにやればいいのか、どんなサービスがあるのかという実例に踏み込んだ記事は極めて少なかったのが実情でした。

今思うと、書いている側もわかってなかったんでしょうね。

 

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ABOUTこの記事をかいた人

1972年愛媛県松山市生まれ。アーケード、家庭用、PCはもとより美少女ゲームまで何でも遊ぶ、ストライクゾーンの広い古参ゲーマー。ただし、下手の横好きがたたり、実力でクリアできたゲームの数は決して多くないのが弱点。